急性胆嚢炎の手術法「東京ガイドライン2018」より

外科

現在では急性胆嚢炎であっても、基本的には腹腔鏡を用いた手術が第一選択となっています。しかし、炎症が強い状態での胆嚢摘出はときに非常に困難な場合があります。

東京ガイドライン2018(TG18)に記載されている急性胆嚢炎の手術の際に注意するべきポイントについてのまとめです。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jhbp.517
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急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術の手順

TG 18

ステップ1 胆嚢のドレナージ

胆嚢が緊満したままでは、術野の展開や鉗子での把持が困難なため、まずは胆嚢の内容物を針で穿刺し吸引します。

ステップ2 Calot三角の展開

胆嚢に効果的な牽引を加えることにより術野を展開します。

頭側・腹側へ胆嚢を牽引し、Rouviere溝を確認することを忘れずに。

ステップ3 剥離開始

胆嚢頚部の背側・外側から剥離を開始し、胆嚢壁を確認します。

ステップ4 胆嚢壁に沿った剥離

ステップ3で確認した胆嚢壁に沿って胆嚢周囲の剥離を進めます。

合併症を避けるための鉄則として、決して胆嚢から離れたところを切らないようにします。

ステップ5 胆嚢床の剥離

胆嚢床の剥離は、普段よりも広く(少なくとも頚部側1/3以上)行うようにします。

炎症のない胆嚢の摘出術であれば、必要最低限の剥離でも安全に剥離を進めることはできますが、炎症がある時の剥離では、十分に広く術野をとる必要があります。

総胆管や後区域のグリソンを避けるためにも、絶対に安全な胆嚢体部辺りまで胆嚢床の剥離を行うと良いでしょう。

ステップ6 Critical View of Safety(CVS)の確立

CVS critical view of safety

あらゆる手術書に絶対に記載してあるCVS。それだけ重要だということです。「CVSを確立しないままに、あらゆる管状構造物を切ったり結紮したりしては絶対にいけません」

何度もしつこいですが、これは本当に大切なことなので、必ず守ってください。

総胆管損傷や後区域グリソンの損傷は、CVSを確立しなかったがために起こることがほとんどです。

確かに胆嚢管を先に切れば、術野は良くなります。しかし、その油断が命取りになる可能性があることを忘れてはいけません。

術野展開に行き詰まった場合は、無理して管を切ったりするのではなく、後に述べるように、底部からの剥離などの救済措置をとります。

胆嚢摘出術の難易度の指標 「Delphi Consensus」

胆嚢周囲・Calot三角・胆嚢床の線維化の程度、胆嚢壁の壊死や穿孔、内臓脂肪過多、肝臓の線維化や肝硬変など、いくつかの因子をグレード分けしたものです。

難易度の高い場合は、早め早めに救済措置をとることを考えます。

困難な胆嚢摘出術に対する救済措置

TG18

開腹転換

従来からの最も一般的な救済措置です。

開腹することにより、触覚が加わることが最大のメリットです。

また、腹腔鏡下の手術の熟練度が低い場合は、手術器具の操作性も大きく向上します。

ただ、炎症や線維化が強い症例の場合は、開腹転換しても格段に手術が安全になるというわけではないことに注意が必要です。

胆嚢の部分切除・亜全摘

Calot三角の安全な剥離が不能な場合は、頚部側の胆嚢を一部残す、部分的な切除に切り替えます。

胆嚢の断端は閉鎖するか、ドレナージします。

約5%に、遺残した胆嚢内に後に結石ができるとされています。

Fundus First Approach

通常腹腔鏡下胆嚢摘出術では、胆嚢周囲の剥離は頚部側から行いますが、底部(Fundus)側から剥離を行う方法のことをFundus First Approachと呼びます。

他にもドームダウンや底部ダウンなどと呼ばれることもあるようです。

この方法を用いることで、胆嚢の部分切除を安全に行うことができるという選択肢が生まれます。

また、即座に開腹転換せずに、安全に手術を進めることができるというメリットもあります。

ただし、この方法でも、剥離層が胆嚢から離れると、総胆管切断などの重篤な合併症を起こすリスクはなくならないため注意が必要です。

ポートの追加

これはTG18には記載はありませんが、ポートを1本追加することで非常に手術が快適になることがあります。

具体的には、助手の操作ポートを1つ増やします。

ポートの位置は、マルチポートデバイスなどを使って臍から入れるか、右鎖骨中線上の臍の高さ辺りが良いです。

ここから助手の右手を使って、大網などを尾側へ牽引したり、吸引管を使って血液を除去したり、ソフト凝固を使って止血をしたりしてもらいます。

とくに止血や吸引を助手が行ってくれることによる効果は大きく、血によって視野が妨げられにくくなり、安全かつ迅速な手術につながります。

まとめ

安全に胆嚢炎の手術を行うためには

標準化された手順を守って手術操作を進めること

線維化や癒着によってCalot三角が展開できない場合は、救済措置をとること

Critical view of safetyを確立してから胆嚢管と胆嚢動脈を切ること

むやみにクリップや電気メス焼灼による止血をしないこと

が大切です。

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