急性胆嚢炎の治療法の選択「東京ガイドライン2018」より

外科

東京ガイドラインが2013から2018に改訂されました。

 Tokyo Guidelines 2018(TG18)|Japanese Society of Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery

いくつか重要な変更点がありましたので、主に外科治療の部分に関して確認していきたいと思います。

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抗生剤の選択

抗生剤の選択について、ABPC/SBTの優先度がかなり下がっています。

耐性菌が増えているということで、耐性菌の頻度が20%を超える場合は使用は推奨されないということです。

市中感染のGrade1の急性胆嚢炎で、耐性菌の頻度が低ければ推奨ということになっています。

ABPC/SBTの優先度が低いことに関係してか、PIPC/TAZの優先度が上がったように思います。ただ、PIPC/TAZに対する耐性菌も増えてきているということで、地域の感受性を確認しておくことが重要だと思います。

抗生剤の投与期間

市中感染で、穿孔や壊死のない単純なGrade1〜2の急性胆嚢炎であれば、感染巣のコントロールがついた後、24時間以内に終了可能ということになっています。

Grade1〜2でも穿孔や壊死がある場合や、Grade3の場合は、感染巣のコントロール後4〜7日間の抗生剤投与が推奨されています(Gradeについてはこの記事の下記項目参照)。

手術の可否についての判断

急性胆嚢炎の管理のフローチャートで重要な変更がありました。

TG13では重症度に応じて治療法を決めるスタイルでしたが、手術の優先度が高すぎて、手術リスクが高い患者には適応しづらいといった印象が強かったです。

TG18では、急性胆嚢炎の重症度だけではなく、患者側の基礎疾患も考慮されるようになり、手術リスクに応じて治療法が選択されるスタイルに変更されています。この変更により、より実際の臨床現場に即した判断がガイドラインに沿ってできるようになりました。

下記のCharlson合併症指数やASA–PSや予測因子を評価し、手術が可能かどうか評価します。

Charlson合併症指数(Charlson comorbidity index:CCI)

患者の手術リスクを判断する上で必要になってくるのが、このCCIです。

合計点が高いほど予測死亡率が上昇します。

手術リスクが低いとするカットオフ値は、Grade1〜2の急性胆嚢炎では5以下、Grade3では3以下となります。

CCIの計算はこちらのサイトが便利です。

ASA−PS

こちらは比較的有名です。米国麻酔学会によって開発された全身状態の評価基準です。

手術リスクが低いとするカットオフ値は、ASA−PS Ⅱ以下となります。

予測因子

重症の急性胆嚢炎は、心血管機能、神経機能、呼吸機能、腎機能、肝機能、血液機能のいずれかに機能障害が生じているものです。

これらのうち、心血管機能不全および腎機能障害は、しばしば初期治療および支持治療によって可逆性に改善されるため、favorabre organ system failure(FOSF)とされます。

一方で、神経機能障害、呼吸機能障害、黄疸の存在は術後の死亡率を高めるとされています。

最適な手術のタイミング

TG13では、発症後72時間以内という時間的な指標が挙げられていましたが、TG18では、患者が手術に耐えられると思われる場合は、発症後どのくらい時間が経過していても早期に手術することが推奨されています。すなわち、可能な限り発症後72時間以内に、できれば1週間以内に手術することが推奨されています。

早期に手術を実施することにより、入院期間が短くなったり、待機期間中に急性胆嚢炎を再発して緊急手術になったり、徐々に炎症が進んで組織が瘢痕化して手術が困難になる、といったリスクが低減されるとのことです。

PTGBD(経皮経肝胆嚢ドレナージ)後の手術のタイミング

これについては、現時点ではエビデンスが不足しており、推奨事項はありませんでした。

TG18にはいくつかの試験結果が記載されていますが、PTGBD直後(72時間以内)は少なくとも手術することは止めておいた方が良さそうです。

4〜6週間後にLap−Cを行うと良好な結果が出たという報告も記載されていますが、コストや入院期間の問題があります。

チューブ管理が自分でできる患者であれば、ドレナージチューブを留置したままいったん退院し、4〜6週間空けてから手術という選択ができそうです。

ただ、現実にはそういった患者は少ないので、現時点では1〜2週間後辺りが妥当でしょうか。

PTGBD後の手術時期については、現在CHOCOLATE試験が進行中なので、その結果を待つことになりそうです。

急性胆嚢炎の重症度判定(Grading)

 Grade III (重症)

以下のいずれかの臓器機能障害を伴うもの

1. 心血管系: ≥5μg/kg per min以上のドーパミンや、いかなる量かのノルエピネフリンを要する低血圧hypotension requiring treatment with dopamine ≥5 μg/kg per min, or any dose of norepinephrine
2. 神経系: 意識レベル低下
3. 呼吸器系: PaO2/FiO2 比 <300
4. 腎機能障害: 乏尿、クレアチニン >2.0 mg/dl
5. 肝機能異常: PT‐INR >1.5
6. 血液系: 血小板数 <100,000/mm3

 Grade II (中等症)

以下のいずれかの状態を伴うもの

1. 白血球増多 (>18,000/mm3)
2. 右上腹部の触知可能な腫瘤
3. 72時間以上の症状持続
4. 著しい局所の炎症 (壊疽性胆嚢炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍、胆汁性腹膜炎、気腫性胆嚢炎)

 Grade I (軽症)

上記の“Grade III” もしくは “Grade II” のいずれの条件にも当てはまらないもの。
臓器機能障害のない、胆嚢の炎症が軽度であり、胆嚢摘出術が安全かつ低リスクな手順で行えるもの、というようにも定義できる。

急性胆嚢炎の管理のフローチャート

急性胆嚢炎の治療方針を決めるに当たっては、

  • 手術リスク
  • 胆嚢炎の重症度

の2つの側面を考慮することが必要です。

Grade1

λ, CCI 5 以下 and/or ASA class II 以下 (低リスク)

µ, CCI 6 以上 and/or ASA class III 以上 (非低リスク)

▵, もし手術困難であれば、開腹転換を含めた救済措置をとるべき

 

手術リスクが低い患者では早期に腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap−C)を行います。

手術リスクが低くない患者では、初期治療で症状改善後に早期Lap−Cを行います。

はっきりとは記載はありませんでしたが、手術リスクが比較的高い患者は、症状改善後に、予防的に胆嚢摘出を行うことが推奨されるかは不明です。胆嚢炎を起こす度にPTGBDを繰り返すのが妥当な場合が多いかもしれませんが、個々の症例によって違うかと思われます。

また、こちらもはっきりとは記載されていませんが、手術リスクが高い患者が初期治療で症状改善しない場合は、PTGBDなどのドレナージに進んだ方が良いと思われます。

Grade2

α, 抗菌薬と支持療法が奏功した

ϕ, 抗菌薬と支持療法が奏功しなかった

λ, CCI 5 以下 and/or ASA ‐PS class II 以下 (低リスク)

µ, CCI 6 以上 and/or ASA ‐PS class III 以上 (非低リスク)

※ 抗菌薬治療開始前に血液培養採取を考慮すべき

†, 胆嚢のドレナージの際には胆汁培養を採取すべき

▵, もし手術困難であれば、開腹転換を含めた救済措置をとるべき

 

手術リスクが低い患者では早期Lap−Cが推奨されます。ただし、しばしば重度の局所炎症を伴うGrade2の場合は、手術が技術的に難しいことがあるため、術中の困難指数に応じて救済措置(開腹転換やFundus first approachや亜全摘など)をとり、重大な合併症を避ける努力を忘れないようにします。

Grade3

※, 抗菌薬治療開始前に血液培養採取を考慮すべき

#, 好ましくない予後因子: 黄疸 (T-Bil ≥2)、意識障害、呼吸不全

Φ, FOSF : favorable organ system failure = 入院して早期腹腔鏡下胆嚢摘出術前に速やかに改善する心血管系もしくは腎機能障害

 *, Grade III の場合、CCI (Charlson comorbidity index) 4以上、ASA‐PS 3 以上は高リスク

†, 胆嚢のドレナージの際には胆汁培養を採取すべき

Ψ, 高度医療センターとは、集中治療と高度な腹腔鏡手術技能をもつ施設

▵, もし手術困難であれば、開腹転換を含めた救済措置をとるべき

 

高度な集学的治療と腹腔鏡技術を提供できる施設での管理が原則です。

一般的な初期治療に加えて、しばしば陽圧換気や昇圧剤などの呼吸・循環補助が必要になります。

手術リスクが低く(Grade3ではCCIのカットオフ値が3以下と、より厳しいことに注意)、臓器機能障害が腎障害や心血管機能不全といったFOSF(favorable organ system failure)であれば、集中治療に長け、熟練した腹腔鏡技術をもつ医師のもとでの早期Lap−Cが提案されます。

それ以外の場合は緊急もしくは早期胆嚢ドレナージを行います。

胆嚢ドレナージ後に全身状態が良ければ遅延Lap−C、全身状態が悪ければ経過観察となります。

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