【ガイドライン】小児の急性虫垂炎疑いに対するスコアリングシステムの意義

外科
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はじめに

急性虫垂炎の診断や手術治療に関するWSES(World Society of Emergency Surgery)のエルサレムガイドラインが、2015年版から2020年版にアップデートされました。
急性虫垂炎が疑われる「小児」患者で、臨床スコアは診断にどのように役立つのか見ていきましょう。
急性虫垂炎は、小児の最も一般的な外科的緊急事態のひとつです。
しかし、臨床的なバリエーションが多いことや、病歴や身体所見を正確にとることが難しいため、早期診断は困難です。
いくつかの臨床スコアリングシステムが開発されていますが、AlvaradoスコアとSamuelの小児虫垂炎スコア(PAS:Pediatric Appendicitis Score)が一般的です。

国内のガイドライン

「エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017」によると、虫垂炎のリスクを層別化するために、Alvaradoスコアか、Periatric Appendictis Score(PAS)のどちらかを用います。
Alvaradoスコア
PAS 小児虫垂炎スコア
これらのスコアで3点以下であれば急性虫垂炎の可能性は低いと判断されます。
4〜6点であれば画像検査などさらなる精査を提案します。
7点以上であれば画像検査へ進みます。

小児虫垂炎スコアとAlvaradoスコアの比較

小児虫垂炎スコアには、子供の場合により適切な徴候に加えて、Alvaradoスコアと同様の臨床所見が含まれます。つまり、咳・跳躍・叩打時の右下腹部痛です。
 小児虫垂炎スコアとAlvaradoスコアを比較したいくつかの研究については下記のように報告されています。
Kulikらによる系統的レビューでは、どちらのスコアも、CRPと同等のパフォーマンスベンチマークを満たしていませんでした。
平均して、小児虫垂炎スコアは急性虫垂炎を35%過剰診断し、Alvaradoスコアは32%過剰診断します[44]。
つまり、特異度は低く、診断確定には使えないということです。逆に、どちらも疾患の除外には適しています。

未就学児での検討

未就学児の場合、急性虫垂炎はしばしば典型的ではない症状や経過を示したり、より急速に進行したり、より合併症が発生しやすくなります。
この年齢層は、学齢期の子供たちよりも小児虫垂炎スコアとAlvaradoスコアが低い傾向があります[45]。
これが、Maccoらが下記のように報告したように、AIRスコアは、Alvaradoスコアと小児虫垂炎スコアよりも優れた結果を出した理由であると思われます。
Maccoらは、急性虫垂炎の疑いのある747人の子供(平均年齢11歳)のデータをレトロスペクティブに分析し、AIRスコア(Appendicitis Inflammatory Response score:虫垂炎炎症反応スコア)と比較したAlvaradoスコアと小児虫垂炎スコアの予測値を評価しました。
AIR 虫垂炎炎症反応スコア
AIRスコアは、Alvaradoスコアと小児虫垂炎スコアよりも、臨床症状の項目が少なく、代わりにCRP・白血球数・好中球割合・筋性防御の程度を評価します。この研究では、AIRスコアが、他の2つのスコアよりも高い識別力を持っていることを示しました[46]。
症状をうまく訴えられない小児では、血液検査などの客観的な指標の価値が高くなるようです。

青年期の検討

小児虫垂炎スコアが、13〜21歳の女性でパフォーマンスに差があるのか調べた研究では以下のような結果で、急性虫垂炎を除外するのには有効だと思われました。
後方視的観察研究では、≥8のカットオフで、小児虫垂炎スコアが青年期(13〜21歳)の女性で89%、他のすべての患者で78%の特異度を示し、有意差がありました。
7以上のカットオフでは特異度に違いはありませんでした。陽性予測値は両群とも不良(3〜5割程度)でした。
3以上のカットオフで、小児虫垂炎スコアは両方のグループで同様の感度(97.7% vs 99.5%)を示しました[47]。
青年期においても、男女問わず、除外には役立つということのようです。

新しい小児虫垂炎検査スコア(PALabS:Pediatric Appendicitis Laboratory Score)

最近、臨床徴候、白血球数、好中球数、CRP、カルプロテクチン(calprotectin)を含む新しい小児虫垂炎検査スコア(PALabS:Pediatric Appendicitis Laboratory Score)が、急性虫垂炎のリスクが低く、注意深い観察で安全に管理できる子供を正確に予測できることが示されています。
PALabS
PALabS≤6の感度は99.2%、陰性予測値は97.6%、陰性尤度比は0.03です[48]。
ただ、カルプロテクチンを外来で当日すぐに測定するのは難しいことが多いと思われ、実用化するには敷居が高そうです。

穿孔の有無は予測できるか

症状の持続時間(> 1日)、発熱(> 38.0 ℃)、および白血球数(> 13,000 / mm3)の3つの独立した要素の有無によって小児の急性虫垂炎における穿孔の有無を予測するスコアが提唱されました。
Bonadioらによって提案された、このスコアリングシステムでは、
上記の3項目を適用した結果の多変量ROC [レシーバー動作特性]曲線は、穿孔の89%をAUC [曲線下面積]の中に示しました。(P <0.001)
また、該当項目が1つ増えるごとに、該当なしの7%から、3つ全て該当する85%まで、直線的に穿孔のリスクが増加することが示されました。[49]。
臨床スコアが疾患の重症度と合併症の発生を予測できるかどうかを評価する際に、小児患者におけるAlvaradoスコアの妥当性に関するレトロスペクティブな研究では、術後合併症に苦しむ患者の方が、スコアの中央値が高いことがわかりました。
Alvaradoスコアの8つの項目の感度を分析したところ、発熱・右下腹部の圧痛・好中球増多は、複雑性急性虫垂炎を予測する上で感度の高いマーカーであることがわかりました(それぞれ、感度88.6%、82.3%、79.7%)。
一方、複雑性急性虫垂炎を予測するために、8つの項目の中で最も陽性予測値(65%)を示すが反跳痛の有無であることがわかりました[50]。

まとめ

急性虫垂炎が疑われる小児患者では、Alvaradoスコアと小児虫垂炎スコアは、急性虫垂炎を除外するのに役立つツールです。
→急性虫垂炎が疑われる小児患者では、臨床スコアのみに基づいて診断を行うことは推奨されません
[QoE:低;推奨の強さ:弱い:2C]。

参考文献

44.

Kulik DM, Uleryk EM, Maguire JL. Does this child have appendicitis? A systematic review of clinical prediction rules for children with acute abdominal pain. J Clin Epidemiol. 2013;66:95–104.

PubMed Google Scholar

45.

Song CW, Kang JW, Kim JY. Different clinical features and lower scores in clinical scoring systems for appendicitis in preschool children: comparison with school age onset. Pediatr Gastroenterol Hepatol Nutr. 2018;21:51.

PubMed PubMed Central Google Scholar

46.

Macco S, Vrouenraets BC, de Castro SMM. Evaluation of scoring systems in predicting acute appendicitis in children. Surgery. 2016;160:1599–604.

PubMed Google Scholar

47.

Scheller RL, Depinet HE, Ho ML, et al. Utility of pediatric appendicitis score in female adolescent patients. Acad Emerg Med. 2016;23:610–5.

PubMed Google Scholar

48.

Benito J, Fernandez S, Gendive M, et al. A new clinical score to identify children at low risk for appendicitis. Am J Emerg Med. 2019;S0735675719303614.

49.

Bonadio W, Shahid S, Vardi L, et al. A pre-operative clinical scoring system to distinguish perforation risk with pediatric appendicitis. J Pediatric Surg. 2018;53:441–5.

Google Scholar

50.

Chung PHY, Dai K, Yang Z, et al. Validity of Alvarado Score in predicting disease severity and postoperative complication in pediatric acute appendicitis. World Jnl Ped Surgery. 2019;2:e000003.

Google Scholar

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