急性虫垂炎のCT読影の手順や鑑別疾患や注意点

外科

急性虫垂炎は頻繁に遭遇する急性腹症の原因です。

放射線科医や外科医だけでなく、研修医や内科医であっても読影できるスキルが求められます。

しかし、これが意外と難しいです。とくに忙しい救急外来や、まさか急性虫垂炎だなんて思っていないときに遭遇してしまった時には容易に見逃されます。

そのため、きちんとした読影法を学んでおくことは非常に大切です。

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概略

急性虫垂炎のCT診断は、

①虫垂の同定

②虫垂の異常の有無と質的診断

③炎症の広がりと合併症の有無の診断

④その他

の順に読影を進めると良いです。

① 虫垂の同定

まず右腎を確認します。

次に上行結腸を確認します。右腎より外側で、最も背中側にある腸管を同定します。それが上行結腸です。

その次は盲腸を確認します。上行結腸を足側に向かって追跡していくことで盲腸が確認できます。

盲腸を確認するに当たって、回腸終末部が結腸につながる場所、すなわち回盲弁(ileocecal valve)を確認しておきます{※回盲弁はバウヒン弁(Bauhin’s valve)とも呼ばれます}。盲腸は多くは右腸骨窩にありますが、胎生期の腸の回転や固定の程度によって、人によっては大きく位置が異なります。盲腸が肝下面や骨盤内に深く落ち込むことも珍しくはありません。

盲腸が同定できたらいよいよ虫垂を同定します。虫垂は多くは盲腸の尾側のやや内側背側に根部があり、盲端で終わる管状の臓器です。虫垂の走行も個人差が大きいことを知っておくと探すときに役立ちます。

ちなみに、肥満で脂肪が多い場合は、正常な虫垂が同定できる事があります。正常な虫垂は、薄くなめらかな壁を有する管腔構造として脂肪組織の中に見られます。

一方、痩せて脂肪が少ない患者では、急性虫垂炎であっても、虫垂の同定が困難な場合も少なくありません。

虫垂を同定するためのポイントをまとめます。

右腎→上行結腸→回盲弁・盲腸→虫垂の順に解剖学的構造を同定していきます。

盲腸の位置や虫垂の走行形態にバリエーションがあることに留意します。

盲腸に始まり、盲端で終わる管状の臓器を探します。

②虫垂の異常の有無と質的診断

急性虫垂炎のCT上の診断基準は、以下の2点を満たすことです。

①虫垂が直径6mm以上に腫大している

②虫垂周囲の脂肪組織の炎症像がある

他には、

造影CTで、増強して造影される虫垂壁の存在

があれば虫垂に炎症が存在していることを表します。

虫垂内の糞石や結石の存在

は単独では急性虫垂炎の診断確定とはなりませんが、もし存在すれば急性虫垂炎の可能性が高くなります。

虫垂の腫大の有無のカットオフは、直径6mmとされています。

(『アッペンディックスがシックスmmを超えたら腫大』と韻を踏んで覚えましょう)

根部側が正常でも、盲端側のみが腫大することがあるので、必ずしも全長に渡って腫大している必要はありません。

炎症があれば、血流増加により、造影CTで壁が強く造影される場合が多いです。

虫垂周囲の炎症を示す所見として、脂肪組織の濃度が上昇して、本来黒いはずの脂肪組織が白くモヤモヤした状態となることが挙げられます。これは俗にdirty fat sign(ダーティーファットサイン)と言う用語で呼ばれます。

この所見は、炎症によって微小血管が血栓閉塞したり、微小出血が起こったりしていることを表しています。(脳出血は、CTで白く見えるのを思い出しましょう)

その他に、脂肪の中に見える筋膜の肥厚、腸腰筋の前面が不明瞭になるなどの間接的な所見もあります。

虫垂が腫大し、かつ、壁が強く造影されていれば急性虫垂炎の可能性が高いです。

さらに虫垂を中心として周囲の脂肪組織の濃度が上昇していれば急性虫垂炎と言ってほぼ間違いないでしょう。

これらの所見と同時に糞石があれば、急性虫垂炎の確率はさらに高くなります。

③炎症の広がりや合併症の有無の確認

虫垂の周囲をチェックします。

特に盲腸、上行結腸、回腸末端の変化を見ます。膿瘍形成、遊離ガス、麻痺性イレウスなどがないかどうかなどを確認します。

膿瘍形成の有無は、臨床上治療方針決定に関わる大切なポイントです。

膿瘍は均一な液体もしくはガスの混在する液体で、液体周囲に造影効果の増強を認めます。

④その他

回盲部は多数の疾患が関与する部位です。当然、鑑別すべき疾患も多くなります。

急性虫垂炎と思われても、もう一度思い込みを排して画像をチェックし直し、見落としや所見に矛盾がないかどうか確認しましょう。人間は反射的に結論に飛びつきたがります。バイアスの存在からは逃れられませんが、バイアスがあることを知っておくだけでも誤診を減らせます。

読影のピットフォール

虫垂が穿孔した後では、読影が難しくなります。

虫垂が穿孔して、内容物が排出されてしまうと、急性虫垂炎であっても虫垂の腫大が見られないことがあります。

穿孔していると、虫垂そのものの同定すら難しくなるので注意しましょう。

さらに虫垂が穿孔すると、糞石が虫垂の外に出てしまうこともあるので、遊離した糞石の存在にも注意が必要です。

盲腸壁の局所的肥厚が目立つ場合は、盲腸癌によって虫垂が閉塞したことによる急性虫垂炎の可能性を考えます。

虫垂壁が異常に腫大していたり、急性虫垂炎が15mmを超えて高度に腫大しているにも関わらず虫垂が穿孔していない場合は、虫垂腫瘍(癌など)を鑑別に挙げましょう。

1%程度と稀ですが、腫瘍に関連した急性虫垂炎の可能性を忘れてはいけません。

回腸や盲腸の壁もろとも肥厚している場合は腸炎や憩室炎の可能性を考えます。

結腸憩室炎やクローン病や腸結核を含めた回盲部の腸炎などがありえます。

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