【ガイドライン】急性虫垂炎の診断におけるバイオマーカーの意義

外科
急性虫垂炎の診断や手術治療に関するWSES(World Society of Emergency Surgery)のエルサレムガイドラインが、2015年版から2020年版にアップデートされました。
急性虫垂炎が疑われる場合、各種のバイオマーカーが診断にどのように役立つのか見ていきましょう。
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成人の場合

APPY1

いくつかのバイオマーカーパネルの診断精度は前向きに検証されています。
右腸骨窩に痛みのある患者を対象とした大規模コホートにおいて、急性虫垂炎に対してAPPY1というバイオマーカーパネルの感度と陰性予測値が高いことが示され、それにより急性虫垂炎の評価におけるCTを減らす可能性があるとされました[51]。

CRP

ベースラインと早期のCRP変化の診断的価値が、Msolliらによる前向き観察研究で評価されました。ここでは、臨床的に急性虫垂炎が疑われる患者に対して、CRPのみ、または修正Alvaradoスコアと組み合わせて評価されました。
急性虫垂炎が疑われる患者では、CRPの初期の変化は中程度の診断的価値を示しました。
しかし、CRP値を修正Alvaradoスコアに組み合わせても、診断精度は向上しませんでした[52]。
やはり、CRPだけを頼りに判断を下すのは危険だと思われます。

虚血修飾アルブミン(IMA:ischemia-modified albumin)

虚血修飾アルブミン(IMA:ischemia-modified albumin)レベルは、急性虫垂炎患者の重症度の予測のために使用されています。
Kilicらによると、単純性急性虫垂炎を、壊疽性・穿孔性急性虫垂炎を区別する際に、IMAレベルとCT所見との間に強い正の相関があるとのことでした[53]。
臨床パラメータ・臨床検査・超音波検査を組み合わせることによって、診断の感度と特異性が大幅に向上し、最終的に成人と小児の両方でCTに置き換えることができる可能性があります[54]。

小児の場合

小児患者では、急性虫垂炎が疑われる場合は、ルーチンの検査として、白血球数・好中球数・CRP・尿検査を実施する場合があります。

各種の炎症マーカー

広く利用可能ではありませんが、上記のテストにプロカルシトニンとカルプロテクチンを追加すると、診断の識別が大幅に改善される可能性があります[55]。

小児虫垂炎スコア(PAS)に加えて、生化学マーカーの結果を加味して判断すると、急性虫垂炎のリスクが低リスクグループと中リスクグループに、多くの患者を安全に再分類できます。
そのため、生化学マーカーはスコアリングシステムと組み合わせて使用​​すると有用であることが示されています。
こうすることで、急性虫垂炎が疑われる患者に保存的管理を提供し、不必要な検査を減らすことができるようになります[56]。

Zouari らは、6歳未満の子供における急性虫垂炎の強力な予測因子として、CRP≥10 mg / Lの値を強調しました[57]。

Yuら、プロカルシトニンは、CRPやWBCよりも診断精度が低く、急性虫垂炎を診断するにはほとんど価値がない一方で、複雑性急性虫垂炎の判別には大きな診断的価値があると報告しました[58]。
最近のメタアナリシスでは、「複雑性」急性虫垂炎の診断においてプロカルシトニンが、感度0.89(95%CI 0.84–0.93)、特異度0.90(95%CI 0.86–0.94)、診断オッズ比76.73(95%CI 21.6–272.9)と、より正確になることを示しました[59]。

Zani らは、急性虫垂炎で入院した1197人の小児のデータをレトロスペクティブに分析しました。
それによると、複雑性急性虫垂炎の患者のCRPレベルと白血球数は、通常の患者や複雑性でない急性虫垂炎の患者よりも高かったと報告しています。
著者らは、複雑性急性虫垂炎の患者の58%・複雑でない急性虫垂炎の患者の37%においてCRPは> 40mg / Lであり、複雑性急性虫垂炎の患者の58%・複雑でない急性虫垂炎の患者の43%において、WBC> 15000 /mLであることを発見しました[60]。

最近の1つの研究で、WBC・CRP・骨髄関連タンパク質8/14(myeloid-related protein 8/14)レベルで構成される、APPY1テストという生化学マーカーのパネルが特定されました。
これらのレベルは、小児や青年の腹痛患者において、急性虫垂炎のリスクが低いをグループを非常に正確に特定できる可能性があります。
結果としては、感度が97.1%、陰性予測値が97.4%、陰性尤度比が0.08で、特異度は37.9%でした[51]。

Benitoらは、腹痛を訴える小児患者において、急性虫垂炎の除外のために、白血球数・好中球数・CRP・プロカルシトニン・カルプロテクチンなどの炎症マーカーやAPPY1テストがどれくらい有用であるかを前向きに評価しました。
APPY1テストパネルは最高の識別力を示し、感度は97.8、陰性予測値は95.1、陰性尤度比は0.06、特異度は40.6でした。
多変量解析では、APPY1テストと好中球> 7500 /mLのみが急性虫垂炎の有意なリスク因子でした[55]。

APpendictis-PEdiatric score (APPE score)

最近では、急性虫垂炎のリスクを特定することを目的として、APpendictis-PEdiatric score (APPE score)が開発されました。APpendicitis PEdiatric (APPE) score
APPEスコアが8点以下の患者は、急性虫垂炎の可能性が低く(感度94%)、スコアが15点以上の患者は、急性虫垂炎のリスクが高い(特異度93%)という結果でした。
8〜15点の間は中リスクと定義されました[61]。

尿中マーカー

ロイシンリッチα-2-糖タンパク質(LRG:leucine-rich α-2-glycoprotein)など、急性虫垂炎の尿中バイオマーカーを見つけるために、小児虫垂炎スコア(PAS:Pediatric Appendicitis Score)およびルーチンの血液検査と組み合わせて、子供の前向き研究の数が行われました。
ロイシンリッチα-2-糖タンパク質は、小児虫垂炎スコアを組み合わせることで、95%の感度、90%の特異度、91%の陽性予測値、95%の陰性予測値で、小児の急性虫垂炎を診断できることが分かりました[62]。

 

開発された新しいバイオマーカーの中で、AuB—ロイシンリッチアルファ2糖タンパク質(AuB—leucine-rich alpha-2-glycoprotein)という尿中バイオマーカーは、血液検査をせずに、小児の急性虫垂炎を除外するための診断ツールとして有望であるようです(陰性予測値97.6%)[63 ]。

まとめ

生化学マーカーは、成人において、急性虫垂炎の除外や、複雑性急性虫垂炎の判別をするための有望な診断ツールと言えそうです。
ただし、さらに質の高いエビデンスが必要です。
[QoE:低;推奨なし]。

 

白血球数・好中球数・CRPは、小児の急性虫垂炎を予測するための有用な検査です。
さらに、入院時のCRP≥10 mg / Lおよび白血球数≥16,000 / mLは、小児の虫垂炎の強力な予測因子です。

→急性虫垂炎の疑いのある小児を評価する際には、定期的な血液生化学検査や炎症マーカーを確認することが推奨されます。
[QoE:Very Low;推奨の強さ:強い:1D]。

→急性虫垂炎が疑われる小児患者では、炎症の重症度と画像検査の必要性を予測するために、バイオマーカーと臨床スコアリングシステムの両方を確認することが推奨されます。
[QoE:Very Low;推奨の強さ:弱い:2D]。

参考文献

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Huckins DS, Copeland K, Self W, et al. Diagnostic performance of a biomarker panel as a negative predictor for acute appendicitis in adult ED patients with abdominal pain. Am J Emerg Med. 2017;35:418–24.

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Msolli MA, Beltaief K, Bouida W, et al. Value of early change of serum C reactive protein combined to modified Alvarado score in the diagnosis of acute appendicitis. BMC Emerg Med. 2018;18:15.

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Lima M, Persichetti-Proietti D, Di Salvo N, et al. The APpendicitis PEdiatric (APPE) score: a new diagnostic tool in suspected pediatric acute appendicitis. Pediatr Med Chir. 41. Epub ahead of print April 2, 2019. https://doi.org/10.4081/pmc.2019.209.

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外科
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