急性虫垂炎のガイドラインにおける画像検査の推奨事項

外科
急性虫垂炎の診断や手術治療に関するWSES(World Society of Emergency Surgery)のエルサレムガイドラインが、2015年版から2020年版にアップデートされました。
急性虫垂炎が疑われる場合の画像検査の意義について見ていきましょう。
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画像検査が必要か?

【ガイドライン】成人の急性虫垂炎疑いに対するスコアリングシステムの意義
急性虫垂炎の診断や手術治療に関するWSES(World Society of Emergency Surgery)のエルサレムガイドラインが、2015年版から2020年版にアップデートされました。 そこで、今回は、「成人」の急性虫垂炎の診...

急性虫垂炎の画像検査の必要性を推定することは、診断におけるワークアップで重要なことです。

各種の臨床スコアリングシステムは、画像検査の実施の有無をガイドできる可能性があります。

AIRスコアやAlvaradoスコアによる低リスクの成人患者は、安全に帰宅できる可能性があります。

一方、中リスクの患者は画像診断の実施のメリットが大きい可能性が高いです。[64]。

画像検査だけでなく、臨床所見もきちんと考慮することが重要であるといえそうです。

超音波検査(エコー)

超音波検査が陽性であれば、虫垂切除術の必要性が示唆されます。

超音波検査が陰性であれば、CTや超音波検査を繰り返すことというさらなる精査につなげるのが妥当でしょう。

条件付きCT戦略は、CTの数を50%削減し、即時CT戦略と同じくらい多くの急性虫垂炎患者を正確に特定できます。

そのため、CTは、急性虫垂炎を疑うものの、超音波検査が陰性であった場合にのみ実行されることが望ましいと言えます。

ポイントオブケア超音波検査(POCUS:Point of Care Ultrasound※下記補足参照 )は、急性虫垂炎の診断において貴重な診断ツールであることが証明されています。

超音波検査の全体的な感度と特異度は76%と95%で、CTの場合はそれぞれ99%と84%でした[65]。

(※補足:POCUSは、臨床医が診断の手がかりを確認するという目的を持って、ベッドサイドで行うエコー検査。確認したい所見をリアルタイムですぐ確認できるため、救急や集中治療領域での有用性が高い)

 

Matthew Fieldsらによるメタ分析では、POCUSの有用性が以下のように報告されました

急性虫垂炎の診断におけるPOCUSの感度と特異度は、それぞれ91%と97%でした。陽性および陰性予測値は、それぞれ91%と94%でした[66]。

急性虫垂炎の診断に対する超音波検査の信頼性は、標準化された診断アルゴリズムを通じて改善できるとされます。

 Solaらの研究では、標準化された超音波検査のテンプレートを含む、CTよりも超音波検査を優先して実施するという診断アルゴリズムを採用した結果、診断不明の頻度が44.3%から13.1%に減少し、急性虫垂炎の診断確定という結果が46.4%から66.1%に増加しました[67]。

CT

Salminenが率いるフィンランドのグループによる研究では、急性虫垂炎の診断、または単純性と複雑性急性虫垂炎の区別において、低線量造影CTの診断精度が標準のCTよりも低くなく、大幅な放射線量の削減を可能にすることを示しました。

OPTICAP無作為化試験では、低線量と標準線量のCTの比較が行われました。

静脈内造影剤を使用した低線量プロトコルは、診断の正確性(低線量CTで79%、標準のCTで80%)と急性虫垂炎重症度の分類の正確性(両方のプロトコルで79%)の2点において、標準線量のプロトコルに劣っていませんでした。

一方で、低線量CTの平均放射線量は、標準CTと比較して有意に低くなりました(それぞれ3.33および4.44μmSv)[12]。

青年および若年成人に対する虫垂CTの放射線量は、2 mSvに減らすことができます。その際、臨床転帰を悪化させることはなく、電離放射線への曝露の潜在的リスクを低減することができました[68]。

成人の急性虫垂炎の診断のためのCTスキャンに関するコクランシステマティックレビューでは以下のように報告されました。

合計10280人の参加者を含む、71の別々の研究集団を含む64の研究が対象となりました(急性虫垂炎あり:4583、急性虫垂炎なし:5697)。

CTスキャンの感度は0.95で、特異度は0.94でした。

急性虫垂炎の有病率の中央値(0.43)では、CT結果が陽性の後に急性虫垂炎が発生する確率は0.92で、CT結果が陰性の後に急性虫垂炎が発生する確率は0.04でした。

造影剤使用によるサブグループ分析では、静注造影剤によるCT(0.96)、注腸造影剤によるCT(0.97)、および静注造影剤と経口造影剤の併用(0.96)を行ったCTの方が非造影CT(0.91)よりも感度が高くなりました。

低線量CTの感度(0.94)は、標準線量または指定されていない線量のCT(0.95)の感度と同等でした。低線量CTの特異度も、標準線量または指定されていない線量のCTとの間に差はありませんでした[69]。

このように、急性虫垂炎の診断において、CTは高い感度と特異度を示しています。

単純CTよりは、造影剤を使用したCTの方が、高い診断能力を持ちますが、単純CTでもかなり高い感度を持っていると言えそうです。

造影する場合は、低線量CTが利用できる場合は、それを活用するのが良さそうです。

穿孔の有無の判定においては、CTの有用性は限定的です[70]。

複雑性急性虫垂炎患者の特定の精度を向上させる方法をさらに模索する必要があると思われます。なぜなら、これらは抗生物質療法による治療失敗の予測を改善したり、患者と医療者が治療オプションの意思決定を共有するのに大切な情報だからです。

CTで急性虫垂炎の診断がはっきりしない場合は、超音波検査を繰り返しましょう。超音波検査で、急性虫垂炎に特徴的な所見(圧迫されてもつぶれない虫垂の存在、虫垂壁の血流増加)が、正常虫垂と急性虫垂炎との区別に役立ちます[71]。

POCUS Tips | POCUS.org | POCUS for Appendicitis
Check out our helpful point-of-care ultrasound (POCUS) tips and infographics. This month focuses on point-of-care ultrasound for appendicitis.

MRI(とくに妊婦の場合)

MRIは、少なくともCTと同じ感度と特異度を備えています。

一方で、検査費用が高額であるということや、多くの施設で簡単には実施できないというデメリットを抱えています。

放射線被曝がないという点で、妊婦では、CTよりも推奨されます。

妊娠中の女性に対する米国放射線医学適正基準では、急性虫垂炎が疑われる場合の好ましい初期検査法として超音波検査が推奨されています。

これらの基準では、MRIはセカンドラインイメージング法として推奨されていますが、もし可能な場合はファーストラインの診断モダリティとして使用することもできるとされています[72]。

他の人はまた、超音波検査の後でMRIを行うよう推奨しています[73]。

いくつかの優れた超音波検査の精度の報告にもかかわらず、エコーには大きな欠点があります。それは虫垂が確認できない確率が高いことです。

エコー陰性であっても病理診断で急性虫垂炎が陽性となるのは34.1%から最大71%になります[74、75]。

妊娠第1期を超えた妊娠中の患者の急性虫垂炎の診断についてエコーの精度が低いことは明らかであり、急性虫垂炎が疑われる妊娠中の女性の30%は潜在的に回避可能な手術を受けていると言われます。

エコーの可視化率が低いことを考えると、エコーて急性虫垂炎の診断が決定的でない場合、セカンドラインイメージングを検討するべきだと思われます。

超音波検査偽陰性で、MRIが陽性の確率は高率です(8%)[73、76]。

2011年から、妊娠中の急性虫垂炎に対するMRIの使用を報告する3つのメタ分析がありました。

感度は90.5%、94%、91.8%でした。特異度は98.6%、97%、および97.9%でした。また、陽性予測値86.3%、陰性予測値99.0%でした[77、78]。

残念ながら、MRIで虫垂が可視化できない確率は、一部の単一施設シリーズによると最大30〜43%にもなります[79、80、81、82]。

非視覚化の割合は、妊娠第3期で、子宮が非常に大きくなり解剖学的歪みが発生するときに高くなります[81]。

陰性または決定的でないMRI結果は、妊娠中の急性虫垂炎を完全には除外しません。

しかし、多くの著者は、主にその高い特異度と感度(それぞれ100%と89%)、陰性予測値(96〜100%)および陽性予測値(83.3〜100%)を理由に、生殖期間中のすべての女性患者のゴールドスタンダードとしてMRIを推奨しています[73、83、84]。

まとめ

エコーと臨床スコアリングシステム(AIR、AASスコアなど)の併用により、診断感度と特異性が大幅に向上します。

それによって急性虫垂炎が疑われる成人患者でCTが削減できる可能性があります。

→診断感度と特異度を改善したり、CTを減らすために、臨床スコアリングシステムとエコーを日常的に併用することが推奨されます。

急性虫垂炎が疑われる患者では、初期評価および臨床スコアを使用してリスクを層別化した後に、しかるべき画像検査を行うことが推奨されます

[QoE:中程度;推奨の強さ:強い; 1B]。

 

中リスクに分類された場合、体系的な画像診断から利益を得る可能性が高いと言えます。

→急性虫垂炎の中リスクの患者では、タイムリーかつ体系的な画像診断を行うことが推奨されます

[QoE:中程度;推奨の強さ:弱い。 2B]。

 

AIRスコア/ Alvaradoスコア/ AASなどに基づく、急性虫垂炎のリスクが高い、40歳未満の患者の場合は、術前のCTを必要としない場合があります。

→40歳未満かつ高リスク患者(AIRスコア9〜12、Alvaradoスコア9〜10、およびAAS≥16)の場合、CTスキャンを回避することが推奨されます

[QoE:中程度;推奨の強さ:弱い。 2B]。

ただし、このガイドラインの制定に際して、全ての急性虫垂炎の疑いが強い患者でCTを実施すべきであるという意見もあったということも考慮に入れるべきかと思われます。

 

POCUS(ポイントオブケア超音波)は、急性虫垂炎の診断において十分な感度と特異性を備えた信頼できる初期評価です。

また、救急医や外科医による迅速な意思決定を容易にします。

 POCUSは、経験豊富な検査者が実施する場合、成人と小児の両方で最も適切な最初の診断ツールだと考えられます。

→臨床評価に基づいて画像検査をする場合は、POCUSが成人と小児の両方の最も適切な一次診断ツールとして推奨されます

[QoE:中程度。推奨の強さ:強い; 1B]。

 

可能であれば、造影剤を使用した低線量CTは、造影剤を使用した標準線量CTよりも優先されるべきです。

急性虫垂炎の診断や、合併症のない急性虫垂炎と複雑性急性虫垂炎の区別において、造影剤を用いた低線量CTの診断精度は、標準のCTに劣りません。また、大幅な放射線量の削減が可能になります。

→急性虫垂炎の疑いがあり、エコーでの所見が陰性である患者では、造影低線量CTスキャンを使用することが推奨されます

[QoE:High;推奨の強さ:強い; 1A]。

 

検査や症状からは急性虫垂炎ではない可能性があるが、症状が改善しない患者の場合、CTなどの断面画像検査が推奨されます。

腹腔鏡検査は急性虫垂炎の診断を確定or除外し、最終的には疾患を治療するために推奨されています。

→右腸骨窩の痛みが解消されない診断不確定な患者には、手術を決める前に断面画像検査を実施することが推奨されます。

もし急性虫垂炎が明らかでなければ、非手術治療が適切です。

ただし、進行性または持続性の痛みがある患者では、急性虫垂炎または代替の診断を確立/除外するために、審査腹腔鏡検査が推奨されます

[QoE:High;推奨の強さ:強い; 1A]。

 

MRIは妊娠中の患者の急性虫垂炎の診断において、非常に感度も特異度も高い検査です。

ただし、陰性または確定的でないMRI結果は虫垂炎を除外するものではありません。

臨床的に疑わしい場合はさらなる精査や手術を検討する必要があります。

→妊娠中の急性虫垂炎が疑われる場合の好ましい初期画像化方法として、経腹超音波検査が推奨されます

[QoE:超低;推奨の強さ:弱い; 2C]。

エコーでは結論が出ない場合、虫垂炎の疑いがある妊娠中の患者にMRIを追加することが推奨されます。

[推奨の強さ:弱い。 2B]。

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