成人の合併症のない急性虫垂炎に対するnon-operative management【ガイドライン】

外科

成人の、穿孔や膿瘍形成などの合併症のない急性虫垂炎(単純性急性虫垂炎)に対して、手術せずに抗菌薬で治療すること(non-operative management)は安全なのでしょうか?

治療失敗のリスクや急性虫垂炎を再発するリスクはどの程度なのでしょうか?

今回はこの辺りの疑問について、エルサレムガイドラインを参考に見ていきたいと思います。

Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines

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non-operative managementの安全性

最近の体系的なレビューとランダム化比較試験のメタ分析により、合併症のない急性虫垂炎を有する患者の大多数は抗生物質優先のアプローチで治療できると結論付けられています[16、18、100]。

Harnossらによる最近のメタ分析では以下のように報告されました。
抗生物質による初回治療後の症状の再発率は27.4%でした。
1年以内にあらゆる種類の(抗生物質治療の失敗を含む)合併症を考慮に入れると、抗生物質での治療の成功率は、手術を行った場合より大幅に低くなりました(68.4対89.8%)。[16], [17]
成人の合併症のない急性虫垂炎のnon-operative managementは、穿孔率を統計的に増加させないというエビデンスもあります。
抗生物質によるnon-operative managementは、約8%が治療に失敗し、結果的に初回の入院中に手術を要します。
さらに20%の患者では、退院から1年以内に急性虫垂炎の再発のために2回目の入院が必要となります[16、17]。

患者の選択

非手術的アプローチの成功には、慎重な患者選択と壊疽性急性虫垂炎、膿瘍、汎発性腹膜炎の除外が必要です。
Hanssonらによる、2014年に発表された急性虫垂炎患者581人に関する研究では以下のように報告されました。
CRP <60 g / L、WBC <12000 / μL、年齢<60歳の3項目の基準を満たした場合、手術なしの抗生物質による治療で89%が軽快することがわかりました[101]。
別の研究では、入院前に症状の持続期間が長い患者(> 24時間)では、non-operative managementが成功する可能性が高くなりました。
Non-operative management成功の他の独立した予測因子には、

  • 発熱がない
  • Alvaradoスコア < 4
  • 単純性急性虫垂炎であることが画像で確認されている
  • 虫垂腫大が軽度

といったことが挙げられました。逆に、これらから外れる場合は手術適応とした方が良い可能性があると言えます[102]。

APPAC Randomized Clinical Trial

APPAC(Appendicitis Acuta)試験という、2015年のJAMAの有名なランダム化試験において、虫垂切除術の奏効率は99.6%でした。
抗生物質群では、患者の27.3%が急性虫垂炎発症後、1年以内に虫垂切除術を受けました。
抗生物質群で、追跡可能な256人の患者のうち、72.7%は手術を必要としませんでした。
抗生物質治療に割り付けられ、最終的に虫垂切除を受けた70人の患者のうち、82.9%は単純性急性虫垂炎で、10.0%は複雑性急性虫垂炎で、7.1%は急性虫垂炎ではなかったものの急性虫垂炎の再発の疑いで虫垂切除術を受けていました。
抗生物質治療に無作為に割り付けられた患者では、腹腔内膿瘍や虫垂切除の遅延に関連する他の主要な合併症はありませんでした[103]。

APPAC試験の5年間の追跡結果では、最初に抗生物質で治療された患者で、急性虫垂炎が再発した確率は39.1%でした。
再発性急性虫垂炎の手術を受けた患者のわずか2.3%が、複雑性急性虫垂炎でした。
全体的な合併症率は、虫垂切除群と比較して抗生物質群で有意に減少しました(6.5%対24.4%)。
この長期フォローアップは、合併症のない急性虫垂炎に対して、手術ではなく、抗生物質を使用したnon-operative managementを行うことの妥当性を支持する結果を示しています[104]。
さらに、抗生物質療法を受けている患者は、手術を受けた患者よりも医療費が低くなります[105]。

糞石の危険性

虫垂内の糞石の存在は、合併症のない急性虫垂炎のnon-operative management失敗の独立した予後リスク因子です。
糞石が存在する場合、穿孔リスクが増加します。
糞石の存在は、「穿孔」および「合併症のない急性虫垂炎のnon-operative managementの失敗」の、両方の独立した予測因子であるという過去の臨床仮説は、Mällinenらによって確認されています[106、107、108]。

やはり、糞石が存在する場合は、手術適応と考えた方が良いです。

妊娠中の患者に対するnon-operative management

症例報告では、妊娠中の合併症のない急性虫垂炎を非手術的に(最終的にまたは手術までの一時しのぎとして)管理できる可能性があることを示しています[109、110]。
単純性急性虫垂炎の妊娠患者の25%が保存的に治療されてました。
治療失敗は15%でした。また、妊娠中に急性虫垂炎を再発したのは12%でした[111]。
少数の公表された症例では、使用した抗生物質は、経口または静注、単剤または組み合わせといった具合で、使用した薬剤も治療期間(合計3〜7日)も様々でした。[102、111]。

まとめ

抗生物質によるnon-operative managementは、単純性急性虫垂炎の、特定の患者においては、安全かつ効果的です。
ただし、その場合、5年間で最大39%急性虫垂炎を再発するリスクがあることを認識している必要があります。
RCTのメタ分析からの最新のデータは、抗生物質を使用したnon-operative managementは、手術と比較して、5年間で全体的な合併症率が大幅に低く、入院・通院の期間が短いことを示しています。

→合併症のない急性虫垂炎と虫垂結石のない選択された患者では、手術の安全な代替手段として、抗生物質によるnon-operative managementについて話し合うことが推奨されます。
またその際には、治療失敗の可能性と複雑性虫垂炎を見逃しているリスクがあることもアドバイスしましょう。
[QoE:High;推奨の強さ:強い; 1A]。

さらなる高レベルのエビデンスが利用可能になるまで、妊娠中に非手術的に急性虫垂炎を治療しないことが推奨されます[QoE:超低;推奨の強さ:弱い; 2C]。

参考文献

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