小児の合併症のない急性虫垂炎に対するnon-operative management【ガイドライン】

外科

小児の、穿孔や膿瘍形成などの合併症のない急性虫垂炎(単純性急性虫垂炎)に対して、手術せずに抗菌薬で治療すること(non-operative management)は安全なのでしょうか?

治療失敗のリスクや急性虫垂炎を再発するリスクはどの程度なのでしょうか?

今回はこの辺りの疑問について、エルサレムガイドラインを参考に見ていきたいと思います。

Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines

スポンサーリンク

初期治療の成功率・急性虫垂炎の再発率などを手術と比較

小児の複雑性急性虫垂炎は19%未満です。
したがって、合併症のない急性虫垂炎の小児の大多数で、non-operative managementにするか手術にするかの選択が必要になります[112]。

抗生物質によるnon-operative managementでは、膿瘍形成や穿孔などの合併症のない急性虫垂炎の小児の97%で初期治療として有効と思われます。
急性虫垂炎を再発するのは14%です。
Non-operative managementは、手術よりも合併症が少なく、病悩期間がが少なく、コストが低くなります[113、114]。

小児の、合併症のない急性虫垂炎に対して、虫垂切除術とnon-operative managementとを比較した利用可能なすべてのエビデンスには、13の研究が含まれました。
そのうち4つはレトロスペクティブ研究、4つは前向きコホート研究、4つは前向き非ランダム化比較試験、1つはランダム化比較試験でした。
Non-operative management群の初期治療の成功率は58〜100%でした。
また、1年で0.1〜31.8%が急性虫垂炎を再発しました[115]。

Minneci らは、7〜17歳の102人の患者を対象とした前向きコホート研究を実施ました。
複雑性急性虫垂炎の発生率はnon-operative management群で2.7%、虫垂切除群で12.3%でした。
手術なしで管理された子供は、1年後の時点で、虫垂切除術を受けた子供と比較して、病悩期間が短く、虫垂炎関連の医療費が低くなりました[114]。

糞石があると失敗率が高い

Huangらによるメタ分析では、小児の合併症のない急性虫垂炎に対する抗生物質による初期治療は、合併症のリスクを増加させることなく、実現可能かつ効果的であることが示されました。
しかし、虫垂に糞石を伴う場合は、抗菌薬による治療の失敗率が高いため、手術適応と考えられます[116]。

Mahidaらによる前向き試験では、糞石を伴う合併症のない急性虫垂炎の小児患者に対して、抗生物質によるnon-operative managementを行った場合、その失敗率は、60%と高かったことを報告しました[117]。
糞石の存在は、TanakaらやSvensson らの報告でも高い治療失敗率が報告されています。(それぞれ47%、60%)
さらにLeeらは、画像で糞石が確認された患者では、糞石のない患者と比較して2倍以上のnon-operative management失敗率を有していたと結論付けています[118、119、120]。

Gorter らの系統的レビューでは、合併症のない急性虫垂炎に対するnon-operative managementおよび虫垂切除後の合併症のリスクが調査されました。
5つの研究(ランダム化比較試験やコホート研究)が分析され、1年間の追跡調査で、147人(non-operative management)と173人(虫垂切除術)の小児患者が含まれました。
合併症を経験した割合は、non-operative managementでは0〜13%、虫垂切除では0〜17%の範囲でした。
Non-operative managementでは、1年間のフォローアップ後に62〜81%が虫垂切除を回避できていました。
著者らは、non-operative managementは1年間は大多数の子供が虫垂切除を回避できるものの、合併症のない急性虫垂炎のすべての子供にnon-operative managementを提案するには不十分である、と結論付けました[121]。

Kesslerらによるメタ分析では、non-operative managementは、初期治療の成功率の低下(相対リスク0.77、95%CI 0.71〜0.84)と再入院率の増加(相対リスク6.98、95%CI 2.07〜23.6)を示し、手術と同等の合併症率(相対リスク1.07、95%CI0.26–4.46)を示しました。
糞石がある患者を除外すると、保存的に治療された患者の初期治療の成功率は改善しました。
著者らは、non-operative managementは再入院率の上昇と関連していると結論付けました[122]。

まとめ

小児の合併症のない急性虫垂炎のnon-operative managementは、初期治療としては実現可能で、安全で、効果的と言えます。
ただし、糞石の存在下では治療失敗率が高くなるため、そのような場合は手術適応とすることが推奨されます。

→糞石のない、膿瘍形成や穿孔などの合併症のない急性虫垂炎の小児患者に対しては、手術の安全かつ効果的な代替手段として、抗生物質によるnon-operative managementという選択肢について話し合うことが推奨されます。
その際、治療失敗のリスクや複雑性虫垂炎を誤診している可能性があることについてアドバイスすることも推奨されます。

参考文献

112.

Omling E, Salö M, Saluja S, et al. Nationwide study of appendicitis in children. Br J Surg. 2019;106:1623–31.

PubMed PubMed Central CAS Google Scholar

113.

Georgiou R, Eaton S, Stanton MP, et al. Efficacy and safety of nonoperative treatment for acute appendicitis: a meta-analysis. Pediatrics. 2017;139:e20163003.

PubMed Google Scholar

114.

Minneci PC, Mahida JB, Lodwick DL, et al. Effectiveness of patient choice in nonoperative vs surgical management of pediatric uncomplicated acute appendicitis. JAMA Surg. 2016;151:408.

PubMed Google Scholar

115.

Xu J, Adams S, Liu YC, et al. Nonoperative management in children with early acute appendicitis: A systematic review. J Pediatric Surg. 2017;52:1409–15.

Google Scholar

116.

Huang L, Yin Y, Yang L, et al. Comparison of antibiotic therapy and appendectomy for acute uncomplicated appendicitis in children: a meta-analysis. JAMA Pediatr. 2017;171:426.

PubMed PubMed Central Google Scholar

117.

Mahida JB, Lodwick DL, Nacion KM, et al. High failure rate of nonoperative management of acute appendicitis with an appendicolith in children. J Pediatric Surg. 2016;51:908–11.

Google Scholar

118.

Svensson JF, Patkova B, Almström M, et al. Nonoperative treatment with antibiotics versus surgery for acute nonperforated appendicitis in children: a pilot randomized controlled trial. Ann Surg. 2015;261:67–71.

PubMed Google Scholar

119.

Tanaka Y, Uchida H, Kawashima H, et al. Long-term outcomes of operative versus nonoperative treatment for uncomplicated appendicitis. J Pediatric Surg. 2015;50:1893–7.

Google Scholar

120.

Lee SL, Spence L, Mock K, et al. Expanding the inclusion criteria for non-operative management of uncomplicated appendicitis: Outcomes and cost. J Pediatric Surg. 2018;53:42–7.

Google Scholar

121.

Gorter RR, The S-MML, Gorter-Stam MAW, et al. Systematic review of nonoperative versus operative treatment of uncomplicated appendicitis. J Pediatric Surg. 2017;52:1219–27.

Google Scholar

122.

Kessler U, Mosbahi S, Walker B, et al. Conservative treatment versus surgery for uncomplicated appendicitis in children: a systematic review and meta-analysis. Arch Dis Child. 2017;102:1118–24.

PubMed Google Scholar

コメントで一緒に記事を盛り上げましょう!

タイトルとURLをコピーしました