【ガイドライン】成人の急性虫垂炎疑いに対するスコアリングシステムの意義

外科
急性虫垂炎の診断や手術治療に関するWSES(World Society of Emergency Surgery)のエルサレムガイドラインが、2015年版から2020年版にアップデートされました。
そこで、今回は、「成人」の急性虫垂炎の診断における、臨床スコアリングシステムの意義についてみていきたいと思います。
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虫垂炎が疑われる成人におけるスコアリングシステムの価値

臨床スコアリングシステムは、急性虫垂炎が疑われる患者のリスクを層別化することで、検査計画を立てやすくし、無駄な検査や入院を減らす効果があります。
臨床スコアだけでも、低リスク患者を十分な感度があるとされています。
代表的なスコアリングシステムごとに、その意義をみていきましょう。

Appendicitis Inflammatory Response (AIR) Score

AIRスコア
判定基準
0-4点 低リスク → 症状改善しなければ再診するよう指示
5-8点 中リスク → 厳重な経過観察もしくは画像検査などさらなる検査
9-12点 高リスク → 手術を推奨(日本であれば画像検査)
AnderssonらによるRCTによると、
低リスクの患者では、AIR(虫垂炎炎症反応)スコアベースのアルゴリズムを使用すると、
  • 画像検査(19.2%対34.5%、P <0.001)
  • 入院回数(29.5%対42.8%、P < 0.001)
  • 検査で虫垂炎が存在しなかった確率(1.6%対3.2%、P = 0.030)
  • 単純性虫垂炎での手術(6.8%対9.7%、P = 0.034)
が減少しました。
中リスクの患者では、画像検査する場合としない場合にランダム化した場合、
  • 陰性虫垂切除の割合
  • 入院数
  • 穿孔率
  • 入院期間
が同じでした。
しかし、ルーティンで画像検査をした場合、急性虫垂炎の治療を受ける患者の割合が増加しました。(53.4%対46.3%、P = 0.020)[29]
急性虫垂炎の診断に利用できる多くの臨床予測モデルの中で、AIRスコアは最もパフォーマンスが高く、最も実用的であると思われます。
Kularatnaらによるレビューでは、感度(92%)・特異度(63%)ということで、急性虫垂炎の除外をするには比較的良い数値であると思われます。[30]

Alvarado Score(アルバラド・スコア)

Alvaradoスコア
Alvaradoスコアは急性虫垂炎の診断を確定するには十分な特異度ではありません。
しかし、カットオフ値を4点以下とした場合、感度99%と、急性虫垂炎を除外するには十分なパフォーマンスを発揮してくれます。
したがって、Alvaradoスコアは、急性虫垂炎が疑われた場合に、低リスクな患者での救急外来での不要な滞在時間や、放射線被曝を減らすために有用です。
大規模な後方視的コホート研究の結果は以下の通りです。
Alvaradoスコアが9以上の男性、10の女性では100%の確率で、病理学的に急性虫垂炎が確認されました。
一方、Alvaradoスコアが2以下であっても、女性患者の5%以下で手術時に急性虫垂炎と診断されたことには注意が必要です。[31]。
また、Alvaradoスコアは、高齢患者において複雑性急性虫垂炎と単純性急性虫垂炎は判別できない、HIV陽性の患者では感度が低いという報告があることにも注意が必要です。[32、33]。
Tanらは、急性虫垂炎が疑われる350人の連続した患者に対して、前向きにデータ収集を行いました。各患者のAlvaradoスコアは入院時にスコアリングされ、最終的な組織学およびCT所見と相関しました。疾患の陽性尤度比は、Alvaradoスコアが4以上の患者でのみ1よりも有意に高くなりました。
男性では7点以上、女性では9点以上であれば、Alvaradoスコアは、CTと同等の陽性尤度比を示しました[36]。

RIPASA Score

RIPASAスコア
7.5点未満であれば急性虫垂炎は否定的(感度98%、特異度81%)
RIPASA(Raja Isteri Pengiran Anak Saleha Appendicitis)スコアは、アジアおよび中東の人口において、Alvaradoスコアよりも優れた感度と特異度を達成すること報告されています。
Malikらによって欧米人に対して、急性虫垂炎を予測する際のRIPASAスコアの有用性を評価する最初の研究が発表されました。[34]。
7.5点(東部の人々での急性虫垂炎を疑うカットオフ値)で、RIPASAスコアは妥当な感度(85.39%)、特異度(69.86%)、陽性予測値(84.06%)、陰性予測値(72.86%)を示しました。
また、急性虫垂炎が疑われるアイルランド人での患者の診断精度(80%)は、Alvaradoスコアよりも正確だったと報告されています。

Adult Appendicitis Score 成人虫垂炎スコア

10点以下  低リスク
11〜15点  中リスク
16点以上  高リスク
成人虫垂炎スコア(AAS)は、患者を3つのグループに階層化します。
急性虫垂炎が臨床的に疑われる829人の成人を対象とした前向き研究では、組織学的に確認された急性虫垂炎患者のうち、58%でスコアが16点以上でした。そのため、93%の特異性でハイリスクグループとして分類されました。
一方で、スコアが10点以下の患者は4%に過ぎず、複雑性虫垂炎の患者はいなかったため、急性虫垂炎の低リスクグループであると分類されました。
また、急性虫垂炎でなかった患者の54%においてスコアは10点以下でした。
ROC曲線下の領域(AUC)は、「Alvaradoスコアが0.790」「AIRスコア0.810」であったのに対して、成人虫垂炎スコア0.882と、良い結果でした。[11]。
Sammalkorpiらによる検証では、成人虫垂炎スコアは全ての急性虫垂炎患者の49%が93.3%の特異度で高リスクグループに層別化されました。低リスクグループでは急性虫垂炎の有病率は7%でした。同じ研究グループは、成人虫垂炎スコアが低い患者では、画像検査の意義は限定的であることを実証しました[35]。

妊婦

妊婦に対して、ほぼすべての理学所見や症状は、単体では急性虫垂炎の有無の判別には役立ちません。[37、38、39]。
英国の154の病院全体で、右腸骨窩の痛みを訴える5345人の患者を対象とした研究の結果は以下の通りです。
15のリスク予測モデルが検証され、このうち成人虫垂炎スコアが女性に対して最高のパフォーマンスを示しました(カットオフスコア8以下、特異度63.1%、失敗率3.7%)、一方、男性ではAIRスコアが最高でした(カットオフスコア2以下、特異度24.7%、失敗率2.4%)[40]。
Alvaradoスコアは、妊婦では特異度が低くなります。
なぜなら、特に妊娠初期では、妊娠していない人と比較してWBC値が高く、吐き気と嘔吐の頻度が高いためです。
妊婦では、Alvaradoスコア(カットオフ値7点)の感度は78.9%、特異度は80.0%であるとされます[41、42]。
RIPASAスコアの特異度(カットオフ値7.5点)は96%ですが、より大きな研究で検証する必要があります。
妊婦に対して、複雑性と単純性の急性虫垂炎を区別するAlvaradoスコアの研究はありません。

術前に複雑性と単純性の鑑別はできるか

複雑性とそうでない急性虫垂炎の区別は困難です。
体温、CRP、超音波上の液体貯留、虫垂の直径に基づく予測モデルが、複雑性急性虫垂炎の「ハイリスク」患者の特定に役立つことが示されています。
臨床的な徴候と画像検査を組み合わせたスコアリングシステムを使用することで、単純性急性虫垂炎と見なされた患者の95%が、正しく識別されたと報告されています。[43]。

まとめ

症状と理学所見のみから、急性虫垂炎と診断確定することは困難。
疾患の可能性、性別、年齢に応じて、個別化アプローチが推奨される。
→患者の年齢、性別、臨床症状、理学所見、血液検査所見などに応じて、急性虫垂炎が疑われる患者の疾患の確率を層別化し、リスクに応じた個別の診断アプローチを採用することが推奨される。
[QoE:中程度;推奨の強さ:強い; 1B]。
臨床スコアのみ(Alvaradoスコア、虫垂炎炎症反応スコア、成人虫垂炎スコアなど)は、急性虫垂炎を除外するのに十分な感度がある。
リスクの低い患者を正確に識別し、そのような患者に対する画像検査や手術を適切に減らしてくれる。
→急性虫垂炎を除外したり、画像診断を必要とする中リスク患者を特定するために、臨床スコアを使用することが推奨される。
[QoE:High;推奨の強さ:強い; 1A]。
→妊婦では、症状や理学所見のみで急性虫垂炎の診断を行わないことが推奨される。
血液検査や超音波などの検査や炎症パラメーター(CRPなど)は常に確認することが推奨される。
[QoE:非常に低い;推奨の強さ:弱い。 2C]。
Alvaradoスコアは、
成人の急性虫垂炎の診断において特異度が低い
高齢患者の複雑性と単純性急性虫垂炎の区別することはできない
HIV患者では感度が低くなる
→成人の急性虫垂炎を確定診断するためにAlvaradoスコアを使用しないことが推奨される
[QoE:中程度;推奨の強さ:弱い。 2B]。
虫垂炎炎症反応スコアと成人虫垂炎スコアは現在、最高の臨床予測スコアであり、急性虫垂炎が疑われる成人で最も高い識別力を持っていると思われる。
虫垂炎炎症反応スコアと成人虫垂炎スコアは、低リスク群の陰性虫垂切除率を低下させ、低リスク群と中リスク群の両方で画像検査と入院の必要性を減らす。
→急性虫垂炎の臨床予測因子として虫垂炎炎症反応スコアと成人虫垂炎スコアを使用することが推奨される。
[QoE:High;推奨の強さ:強い; 1A]。

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