【虫垂炎の症状】症状の順番や身体所見は?

虫垂炎 症状外科
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虫垂炎の病態の進行と症状

伝統的に、虫垂炎の発症初期から虫垂破裂までには、以下のような一連の流れがあると推測されています。

1. 虫垂近位部での内腔の閉塞
2. closed-loop obstruction
3. 虫垂の膨張
4. 粘膜分泌の継続および虫垂内の細菌の異常な増殖
5. さらに虫垂が膨張し、虫垂内圧が上昇
6. 虫垂内圧が静脈圧を超える
7. 虫垂で高度の鬱血が生じる
8. 虫垂の粘膜の血流障害が起き、梗塞による粘膜障害が起きる
9. バリア機能低下による虫垂への細菌の侵入
10. 虫垂の穿孔

上記の詳細と虫垂炎の症状との関連は以下の通りです。
糞石やリンパ組織の増大に伴う虫垂の近位部での内腔閉塞によって、Closed loop obstructionが生じます。

閉塞にもかかわらず、虫垂粘膜からの分泌は続くため、虫垂が急速に膨張します。

この虫垂の膨張は、求心性の内臓神経の神経終末を刺激し、心窩部〜臍周囲のびまん性の漠然とした鈍い痛みを引き起こします。これは内臓痛と呼ばれます。
粘膜分泌の持続および虫垂の常在細菌の急速な増殖により、虫垂の膨満はさらに加速します。これによって、反射性の嘔気・嘔吐が引き起こされたり、内臓痛が増悪したりします。
虫垂の圧力の上昇が静脈圧を超えると、毛細血管や細静脈が閉塞します。ただし動脈の流入は続くため、充血や鬱血が引き起こされます。
炎症は、虫垂の粘膜面から漿膜まで広がっていき、遂には壁側腹膜まで及びます。これにより、右下腹部が出現します。この右下腹部痛は体性痛と呼ばれる、腹膜の感覚神経の感知する痛みです。

内臓痛から体性痛へと変化していくこと、これが虫垂炎の症状で特徴的な『心窩部から右下腹部への痛みの移動 (pain migration) 』の原因です。

虫垂の粘膜は血流障害の影響を受けやすく、そのバリア機能が破綻すると、細菌が侵入してきます。
血液供給が最も少ない領域が最も影響を受けます。そのため、虫垂壁の梗塞は、腸間膜の反対側で最も発生しやすいです。
虫垂の膨張、細菌の侵入、血液供給の低下、および虫垂壁の梗塞の結果として、虫垂内腔の閉塞部位を越えた​​腸間膜対側に穿孔が発生します。

臨床所見

虫垂炎は通常、心窩部〜臍周囲のびまん性の鈍い痛みから始まり、最終的に右下腹部に限局してきます(感度81%、特異度53%)。
このように多くの場合、最初は内臓痛から発症します。ただ、いきなり強い右下腹部痛を自覚する症例も経験されるので、一概には言えません。

虫垂の解剖学的位置が人によって異なることは、体性痛の場所が人によって異なることの理由と考えられています。多くはMcBurney’s point(マクバーニー点)付近の右下腹部痛になりますが、虫垂の位置によっては、下腹部痛であったり、右側腹部痛であったりすることも少なくありません。

虫垂炎はまた、吐き気(感度58%、特異度36%)、嘔吐(感度51%、特異度45%)、食思不振(感度68%、特異度36%)のような胃腸炎と似た症状も引き起こす可能性があります。
胃腸炎との鑑別点として、
嘔気嘔吐や食欲低下などの消化器症状が内臓痛に先行する場合は胃腸炎
内臓痛が消化器症状に先行する場合は虫垂炎
と言われています。
[Does This Patient Have Appendicitis? - PubMed]

多くの患者は、痛みが始まる前に便秘に似た感覚を訴え、実際、排便によって腹痛が緩和されると言います。

下痢は、特に子供の場合、穿孔に関連していることがあります。

ただ、これらの症状もどれか一つで決め手にすることは難しいです。
下の表をご覧ください。

虫垂炎 症状
虫垂炎の症状と、それぞれの陽性尤度比 & 陰性尤度比です。
[Meta-analysis of the Clinical and Laboratory Diagnosis of Appendicitis - PubMed]

※indirect tenderness = Rovsing sign

上の表では、一つの目安として、陽性尤度比が2以上、陰性尤度比が0.5以下の項目をマークしてあります。
どれも診断するには頼りない数値ばかりです。
虫垂炎の検査前確率が60〜70%(何となく虫垂炎っぽい?)程度であれば、陽性尤度比2程度の項目が陽性の場合、検査後確率は70〜80%程度にしかなりません。
一方、虫垂炎の検査前確率が30〜40%(虫垂炎じゃないような気がする)程度であれば、陰性尤度比が0.5程度の項目が陰性の場合、検査後確率は20%程度です。
虫垂炎の診断を確定するにも除外するにも、やはり画像検査は重要ということです。

身体所見

身体所見は、腹膜など周囲組織への炎症の波及の程度によって決定されます。
虫垂炎の患者は、通常歩行時に右下腹部に響くので、ゆっくりと歩きます。
腹部の触診では、McBurney’s pointまたはその近くに最も強い圧痛があります。
深い触診では、しばしば右腸骨窩辺りで筋性防御を感じることがあります。
手での圧迫を急速に和らげられると、患者は腹膜に響くような突然の痛み、いわゆる反跳痛を感じます(反跳痛の診察は患者への苦痛が強いため、最初はRovsing徴候やPurcussin tendernessから診察することをお勧めします)。

直腸診で、右側の直腸の圧痛は虫垂炎の診断に役立つと言われたりもしますが、診断的価値は低いです。患者の苦痛も考慮すると、実施すべき診察ではないと思います。
右股関節の伸展に伴う痛みをPsoas sign(腸腰筋徴候)と呼びますが、これは、右の腰筋付近に炎症が波及していることを示しています。
同様に、股関節を屈曲位にし、外旋させる方向に抵抗をかけて、内閉鎖筋を伸展させると痛みが生じる(obturator sign)も、その筋肉付近での炎症を示唆しています。

まとめ

虫垂炎で特徴的な、右下腹部への痛みの移動は、病態の進行と関連がある。

嘔気嘔吐などの消化器症状が内臓痛に先行する場合は、虫垂炎の可能性が下がる。

虫垂炎では様々な所見が得られるが、いずれも診断を決定するほどの感度や特異度ではない。

虫垂炎の炎症が周囲に波及することで様々な体性痛に関連した徴候がみられることがある。

外科
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