こんな疑問に答えます。
はじめに結論のまとめです。
この記事を読めば、CDHとEEAの違いがよく分かり、スッキリします。
どうぞ気楽に最後まで読んで下さいませ。
DSTによる吻合で用いられる自動吻合器
DSTとは、double stapling techniqueの略です。
いわゆる「肛門からステープラーを挿入して、直腸断端と口側の結腸断端を吻合する方法」の代名詞です。
厳密には、2列のステープルを持つサーキュラーステープラー(自動吻合器)による吻合法ですが、3列のステープラーを使っていてもDSTと言った方が通じやすかったりします。
前置きが長くなりました。本題です。
自動吻合器(サーキュラーステープラー)には、大きく2つの系統があります。
大手メーカーである、赤い会社と青い会社がそれぞれ独自に開発・進化させている製品です。
PROXIMATE®︎ INTRALUMINAL STAPLER ILS
ETHICON社(赤がイメージカラーの会社)製の自動吻合器(サーキュラーステープラー)です。
ILSやCDHなどの通称で呼ばれます。
ILSはINTRALUMINAL STAPLERのイニシャルです。
CDHは製品番号です。
CDHは、プロキシメイト®︎ILSのうち、(ロングカーブ・シャフトではなく)カーブ・シャフトの方です。
アンビルの径は、21、25、29、33mmの4種類あります。
CDHの特徴
この製品の特徴は以下の3点です。
- ギャップセッティング機構
- ワッシャー・カット・システム
- Flexible Anastomosis
それぞれ見ていきます。
ギャップセッティング機構
ギャップセッティング機構とは、簡単に言うと、『組織の厚みや硬さに応じて、手元のスケールを見ながら外科医が手動で最適な締め具合を調整できますよ』というメカニズムです。
吻合器本体とアンビルとの間隔(ギャップ)を適切にセッティングするためのものです。
術者は、ギャップセッティング・スケールを確認しながら、アジャスティング・ノブの締め込みを行います。
こうすることで、アンビルと本体との間隔を、目視しながら最適に調整することができます。
これにより、吻合部の組織の厚みに応じた、適切な圧縮とステイプル高の調整を同時に行うことが可能になるのです。
ワッシャーカットシステム
CDHは吻合の際に、円筒型のナイフが吻合部の組織をワッシャーごと切離・切断します。
これがワッシャー・カット・システムです。
CDHの独特の強い抵抗と、切れた瞬間の『ジャコっ!!』という感触と音は、このワッシャーカットシステムによるものです。
この独特の音により、手術チームのメンバー全員が切離と吻合の完了を認識できます。
Flexible Anastomosis
“Flexible Anastomosis”が可能となるのもILSの大きな特徴です。
吻合部の柔軟性に配慮したステイプル配列とギャップセッティング機構により、適切な内腔を確保しながらウォータータイトな吻合が行えます。
吻合部の組織は千差万別です。
薄いor厚い、やわらかいor堅いなど、様々な組織がありえます。
適切な吻合に重要なのは、『適切な圧縮』と、『適切なステイプル高の形成』です。
ギャップセッティング機構がこの2つの要素をサポートしてくれています。
ファイアのしやすさ
ワッシャーごと切断するということもあり、EEAよりもファイアに強い力を要します。
ただし、本体ハンドルとファイアリングハンドルとの幅が比較的小さいので、EEAよりは、手が小さい人でも若干握りやすいのは助けではあります。(それでも女医さんには厳しい大きさ…)
ECHELON CIRCULAR® Powered Stapler
エシェロン サーキュラー・パワードスティプラーは、電動のサーキュラーステープラーです。
電動ファイアリングにより、ファイアする際の手ブレが抑えられ、より安定した吻合が可能になっています。
CDHは、ファイアするために、手の大きさと握力が必要という問題を抱えていました。
このエシェロン サーキュラー・パワードスティプラーにより、その問題がクリアされたことは大きいと思います。
DST Series™ EEA™ サーキュラーステープラー
Medtronic社(青がイメージカラーの会社)製の自動吻合器(サーキュラーステープラー)です。
アンビルの径は、21、25、 28、 31、 33mmの5種類あります。
径が21、25、28mmのものには、ステープル高が2種類(3.5mmと4.8mm)あり、術者が選択可能です。(径が31、33mmのものは4.8mm高のみ)
シャフト長が2種類(スタンダートとXL)あります。
DST Series™ EEA™ サーキュラーステープラーの特徴
EEAの特徴は以下の2点です。
- ディレクショナルステープリングテクノロジー(DST)
- ティルトトップアンビル
それぞれ解説します。
ディレクショナルステープリングテクノロジー
ディレクショナルステープリングテクノロジーは、厚く固い組織に対してもねじれがなく、より安定したB型ステープルの形成を可能としたテクノロジーです。
『ステープル断面が、丸型ではなく、長方形をしていること』、『捻れないように誘導するアンビルの形状』により、安定したB型ステープル形成が実現されています。
ティルトトップアンビル
ティルトトップアンビルとは、ファイア後のリリース時にアンビルが傾く機能です。
これにより、吻合後に、ステープラーを腸管内から愛護的に抜去しやすくなっています。
トライステープル™ EEA™ サーキュラー
ステープルが3列備わったサーキュラーステープラーです。
これまで自動縫合器に搭載されるのみであったTri-Staple™ Technology がサーキュラーステープラーにも導入されています。
アンビルがスロープ状になっており、さらに、ステープル高が外側ほど高くなっています。
このようにして、外側にいくほど、緩やかに組織を圧縮できるようになっています。
そのため、
- 外側のステープルライン付近にかかる緊張緩和
- ステープルラインのより良い血流維持
- 組織の圧縮力向上による、より厚い組織への適応
が、実現します。
CDHとEEAの比較
エビデンスレベルとしてはだいぶ弱いですが、両者の比較をみていきます。
この文献によると、CDHとEEAの比較において、吻合部狭窄や縫合不全や吻合部出血などの合併症に有意差はありませんでした。
この発表によると、CDHよりも軽い荷重でファイアできるようですが、ハンドルと本体との幅が広いため、手が小さい人だと、片手で使用できないようです。
純粋な感覚的な差としては、CDHの方がファイアに力を要する印象です。
CDHは『ジャコっ!!』という大層な感じですが、EEAだと、『ショっ!』という軽快な感じでファイアできます。
EEAでさえ片手ではファイアがキツいですが、CDHはさらにしんどいです。
男でもファイアに抵抗を感じます。
いわんや女医さんにおいてをや。
ただ、この問題に関しては、CDH系統では、電動のサーキュラーステープラーがあるので、現状としてはクリアされています。
CDHとEEAの使い分け
上記のように、CDHとEEAは大差はないと言えます。
トライステープラーやパワードも含めると、現状としては、「3列のステープラーが好きか、電動が好きか」といった違いで選ぶのも良いかと思います。
今後の展望として、、、
自動縫合器では電動式が一気に広まったので、自動吻合器でも同じことが起こると思います。
3列ステープラーもいずれ両社が導入するでしょう。
となるとあとは電動式の機器の圧感知制御の差とか、故障が少ないとか、本当に微々たる差になってきそうです。
そして最終的には、外科医の好みと、病院が懇意にしている会社を優遇するという大人の事情で使い分けられそうですね。
まとめ
最後に、この記事の内容のまとめです。
CDHの特徴は、
- ギャップセッティング機構
- ワッシャー・カット・システム
- Flexible Anastomosis
電動のものもある。
EEAの特徴は、
- ディレクショナルステープリングテクノロジー(DST)
- ティルトトップアンビル
3列のステープラーもある。
CDHとEEAの違いについて確認しつつ、最後は比較してみました。
これらの機器の選択の助けになれば幸いです。
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参考
https://www.ethicon.jp/products/staplers/ils.html
https://www.ethicon.jp/products/staplers/echelon-circular.html
https://www.medtronic.com/covidien/ja-jp/products/surgical-stapling/circular-staplers.html#
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ikakikaigaku/68/10/68_KJ00001637384/_pdf/-char/ja