癒着性小腸閉塞患者の診断と治療のアルゴリズム

外科

急性小腸閉塞に関して、診断や治療はかなりまとまってきています。

そのため、一般的な管理について学習しておくことはとても大切です。

急性小腸閉塞に関するボローニャガイドラインを参考に、みていきましょう。

Bologna guidelines for diagnosis and management of adhesive small bowel obstruction (ASBO): 2017 update of the evidence-based guidelines from the world society of emergency surgery ASBO working group

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癒着性小腸閉塞患者へのアプローチ

癒着性小腸閉塞 の初期診断は非常に重要です。癒着性小腸閉塞では、診断が不十分であったり診断が遅れたりすることが、過失割合の70%を占めています[53, 54]。

癒着性小腸閉塞患者の診断と治療のためのアルゴリズムが下の図に示されています。

癒着性小腸閉塞の診断・治療アルゴリズム

癒着性小腸閉塞が疑われる患者の初期評価における主な目標は以下の通りです。

  • 癒着性と他の原因との鑑別
  • 緊急の外科的手術の必要性の評価
  • 腸閉塞による合併症の特定と予防

病歴聴取と身体評価

癒着性小腸閉塞が疑われる患者の病歴聴取には、腸閉塞の原因となる可能性の既往歴(過去の手術、放射線治療)や栄養状態の評価が含まれます。
脱水症状の有無も評価する必要があります。
伝統的に、癒着性小腸閉塞は間欠的な疝痛、腹部膨満感、吐き気(嘔吐を伴うか否かにかかわらず)によって、排便の有無に関わらず臨床的に診断されます。
小腸閉塞の診断は、これらの症状をすべて満たしている患者ではかなり確実です。しかし、初診時に腸閉塞の診断を遅らせたり、誤診したりする可能性のある特定の落とし穴があります。
不完全閉塞の患者では、水様性の下痢を呈することがあります。水様性下痢があると、癒着性小腸閉塞のエピソードを胃腸炎と間違えることがあります。また、比較的閉塞度の高い患者であっても、症状発現後早期に来院した場合にも便が出ることがあります。
また、上記の症状のすべてが認められるとは限らず、特に高齢者では痛みがあまり顕著ではないことが多いです [55、56]。

身体診察の際には、絞扼性か否か、つまり腸管虚血の有無を明らかにする必要があります。そのため、腹膜炎の可能性を示す徴候を評価すべきです。
身体診察の際の注意点は、腹壁や鼠径部のヘルニアの有無です。
病歴聴取と身体診察による癒着性小腸閉塞の評価では、腸管の絞扼や虚血の有無に対する検出感度が低いことは知っておく必要があります。絞扼を検出するための身体診察の感度は、熟練者であっても48%に過ぎません[57]。

臨床検査

最低限の臨床検査は、血球数、乳酸値、電解質、CRP、BUN/クレアチニンです。
腹膜炎を示す可能性のある臨床検査値は、CRP > 7.5、白血球数 > 10.000/mm3と言われます。しかし、これらの検査の感度および特異度は比較的低いのであまり当てにはできません [6、57、58]。
腸閉塞のある患者では電解質がしばしば障害されます。特に、カリウムの低値が頻繁に認められ、修正が必要になります。
癒着性小腸閉塞の患者は脱水状態であることが多く、急性腎障害を引き起こしている可能性があるため、BUN/クレアチニンを評価する必要があります。

画像検査

単純X線(レントゲン)

身体診察の補完する意味では、単純X線検査の価値は限定的です。
複数のAir-Fluidレベル(Niveau像)、小腸ループの膨満、結腸内のガスの欠如の3つが小腸閉塞の特徴です。しかし、単純X線の感度および特異度は全体的に低いです(感度は約70%)[59、60]。
癒着性小腸閉塞における腸管穿孔に伴う大量の気腹(遊離ガス)も、単純X線(立位胸部X線が望ましい)で検出できます。しかし、単純X線では、腹膜炎や絞扼性腸閉塞を検出することはできません[59,60,61]。
さらに、単純腹部X線では、腸閉塞のさまざまな原因を鑑別するのに役立つ解剖学的情報は得られません。

水溶性造影剤(ガストログラフィン®︎)

いくつかのシステマティックレビューやメタアナリシスにより、癒着性小腸閉塞の診断における水溶性造影剤の有用性が確認されています[62,63,64]。
造影剤投与後24時間での腹部X線検査で、造影剤が大腸に到達していない場合ことは、非手術的管理が失敗することを強く示唆します。そのため、この時には手術することを考慮すべきです。
水溶性造影剤の使用は、手術の必要性を正確に予測し、入院期間を短縮することが複数の研究で示されています[62, 63]。
また、水溶性造影剤の使用により手術の必要性が減少することを示唆する報告もあります。これは腸管の蠕動の亢進や高浸透圧による浮腫の軽減などによると言われる、造影剤の治療的側面によるものです[62, 63]。

CTスキャン

現在のヘリカルCTは、小腸閉塞の診断に不可欠です。絞扼性と緊急手術の必要性を予測する精度が約90%と高いのが特徴です[37,60,65,66,67,68]。
CTの診断価値は、造影剤を経口投与してコントラストをつけることで高めることができます。水溶性造影剤と同様に、CT後24時間後のX線検査で造影剤の進行度を評価することもできます。

CTでも癒着は直接見ることはできません。しかし、CTでは他の原因を除外することで、腸閉塞の異なる原因を正確に鑑別することができます。そのため、癒着性小腸閉塞を疑う場合や、緊急手術の必要性を評価するためには、CTが好ましい画像診断法です。

CTは、non-operative managementを試みるか、手術に進むかの判断を容易にするのに役立ちます。また、閉塞の位置(空腸の高い位置や骨盤の深い位置など)を特定するのにも役立ちます。
閉鎖(クローズド)ループや腸管の虚血や腹水の存在は、手術が必要となる可能性を示唆します。さらに、放射線学的および臨床的スコアは手術の必要性を予測するために使用できます[37、38]。

超音波検査とMRI

急性小腸閉塞の診断にはCTスキャンが推奨されていますが、特定の状況では超音波やMRIが有用です。
超音波検査は実施者の技量に依存しますが、経験豊富な方であれば、単純X線検査よりも多くの情報を提供することができます。
腸のループの膨張に加え、超音波検査では腹水(緊急手術の必要性を示す可能性がある)を検出したり、脱水状態にある患者のショックの程度を評価したりすることができます [61, 69]。
超音波は、妊娠中の患者のように、放射線被曝が望ましくない場合にも有用です。このような場合には、腸閉塞の診断が確定した場合には、超音波検査をMRIで補完して解剖学的な情報を得るという戦略ができるかもしれません[70]。

まとめ

初期評価では経口水溶性造影剤を用いたCTスキャンが好ましい撮影法です。
造影剤の経過は、24時間経過後にX線で観察することが望ましいです。
癒着性小腸閉塞の診断が確実で(例えば、最近の画像検査で他の原因が除外されたため)、即時手術が必要となる兆候がない場合は、水溶性造影検査のみで十分であると考えられます。
超音波やMRIは、妊娠中や(低所得国では)CTスキャンが利用できない場合など、特定の状況では有用です。

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