憩室疾患(憩室症・憩室炎) の治療方針【Hinchey分類(ヒンチー分類)】

Hinchey分類(ヒンチー分類)外科
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憩室症とは

腸管憩室症は、大腸壁の膨らみ・嚢(Cyst)として視認される。

腸管内の圧力が壁の外側に向かい、脆弱化し、徐々に年を重ねるごとに形成されていくと考えられる。

腸管の蠕動運動異常や筋層の異常を背景として、腸管腔内の圧力が高まり、粘膜が、腸管壁の脆弱な部分(血管が壁を貫通する筋層の隙間)を貫いて、脱出することによって発生する。

便秘や低繊維質の食事は大腸内の圧力を高め、憩室の形成につながる。

憩室は加齢とともに増加していく。45歳未満では約10%の割合で孤立性憩室がある。80歳になると多くの患者に憩室ができる。

通常は、数十個の憩室がある場合、憩室症と呼ばれている。

憩室症の症状

憩室性疾患には外見上の徴候はあっても、無症状であることが多く、通常の生活を送ることができる。

症状を伴うのは約5例のうち1例のみとされる。

通常は、胃腸の調子が悪い、便秘、鼓腸など、さまざまな「消化器症状」として現れる。このように自覚症状は過敏性腸症候群と似ていることが多い。

憩室性疾患の100人に1~2人が突発性の敗血症や憩室炎を発症する。これは通常、腹痛と発熱が生じる。

まれに、腸内で憩室出血を起こし、貧血を起こすことがある。

憩室の嚢の破裂(穿孔)は、突然の重症化を伴う。腹痛などで発症し、その結果、腹膜の炎症を起こし、緊急の治療が必要となる。

結腸の憩室炎の治療

炎症所見を伴わない場合

無症状の場合は緊急での治療の必要はない。

線維の多い食事を摂取するよう指導したり、便通異常がないような日常生活の指導を行う。

過敏性腸症候群の治療が参考になる。

水溶性食物繊維は水にとけてゼリー状となり、大腸内に存在する菌によって発酵され短鎖脂肪酸やガスを生成する。これらは便の貯留時間を短くし、便秘を解消するとされる。

ビフィズス菌製剤などの整腸剤も有効であるとの報告もある。

便秘が軽快すれば、腸管内圧を下げることで疼痛などが軽減される可能性がある。

その他、整腸剤、緩下剤、鎮痙剤などを適宜使用する。

潰瘍性大腸炎やクローン病に対して処方されるメサラジンは、大腸粘膜での局所的な炎症を抑制する作用がある。大腸憩室にともなう症状が、慢性炎症によるであるとの仮説があり、メサラジン(±抗生剤)による治療が有効であるとの報告もある。

炎症を伴う場合

治療方針の決定のためには、Hinchey分類(ヒンチー分類)が有名である。

Hinchey分類(ヒンチー分類)

Hinchey分類(ヒンチー分類)

Ⅰ 傍結腸膿瘍

Ⅱ骨盤内膿瘍もしくは後腹膜膿瘍

Ⅲ 汎発性化膿性腹膜炎

Ⅳ 汎発性便性腹膜炎

Hinchey分類(ヒンチー分類)

2〜5cm 以下の小さな傍結腸膿瘍(Hinchey Ⅰ)であれば、絶食と抗菌薬による保存的治療を行う。

2〜5cmを超える大きな膿瘍(Hinchey Ⅱ)に対しては、エコーやCTガイド下に膿瘍穿刺ドレナージを行う(大きさについては諸説あるようなので、安全に穿刺可能と判断される場合は、感染症治療の原則に則り、ドレナージをTryするのが良いと思われる)。経皮的ドレナージは、症状を緩和したり、(選択的)手術への橋渡しとして機能することもある。

汎発性腹膜炎をきたしている場合(Hinchey Ⅲ〜Ⅳ)は、高い合併症率と死亡率(10-35%)に関連する。このような重篤な状況では、緊急での外科的介入が必要である。Hartmann手術(穿孔した腸管を切除し、口側断端を単孔式ストマとする手術)は、従来から行われている現時点での標準手術である。ただし、最近の文献では、いくつかの興味深い代替法が登場している。

ストマ造設の有無にかかわらず、一期的吻合が可能であるという報告もある。一期的吻合に成功すれば、ストマ閉鎖が不要(もしくは回腸ストマ閉鎖だけで楽)になるというメリットがある。ただ、やはり縫合不全が危惧されるので、便性腹膜炎であっても吻合できたという報告もあるが、当面は汚染が比較的軽度のものに限った方が良いだろう。

さらにチャレンジングな治療法として、2008年には、Myersらが膿性腹膜炎に対する腹腔鏡下洗浄術という概念を紹介した。この方法は、腹腔鏡下に洗浄を行い、穿孔した腸管は、そのまま置いておく、というものである。報告では、この方法によって、87%の患者で治癒したとされる。今後のさらなる検討に期待がかかる。

瘻孔形成を伴う場合

瘻孔(膀胱や腹壁との瘻孔が多い)を伴う場合、自然閉鎖はまれであるため,絶食と抗菌薬投与による保存的治療により炎症を軽快させてから待機手術を行うことが望ましい。絶食と抗菌薬のみで軽快しない場合は、さらに、口側腸管で人工肛門を造設して便流遮断することも必要になる。

狭窄を伴う場合

狭窄に対しては、保存的加療が奏効しない場合には早期の外科的手術を行う。

保存的に軽快した場合には、術前検査を一通り実施した後に待機的に手術を行う。

外科
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