膿瘍を伴う穿孔した急性虫垂炎に対する即時手術と待機的虫垂切除術との比較【ガイドライン】

外科

蜂窩織炎や膿瘍を伴い、周囲との線維化も強そうな急性虫垂炎…。

すぐに手術するのは躊躇われるような状況ですが、そのような場合に、待機的虫垂切除術(interval appendectomy)と早期虫垂切除術を行うのとではどちらが良いのでしょうか?

蜂窩織炎や膿瘍を伴う複雑性急性虫垂炎への最適なアプローチはいまだに議論の的です。

今回はこの辺りの疑問について、エルサレムガイドラインを参考に見ていきたいと思います。

Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines

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過去の報告では保存的治療は合併症が少ない

以前は、保存的治療と比較した場合、即時手術は合併症率が高くなりました。

虫垂膿瘍や蜂窩織炎の非外科的治療は90%以上の症例で成功し、症状再発の全体的なリスクは7.4%で、経皮的ドレナージを必要とする膿瘍はわずか19.7%あると報告されています[202]。

Similisらによるメタ分析(16件の非ランダム化後方視的研究と合計1572人の患者を対象とした1件の非ランダム化前向き研究を含み、そのうち847例が保存的治療で、725例が虫垂切除術での治療)によると、即時虫垂切除術と比較して、保存的治療が全体的合併症(創傷感染、腹部/骨盤膿瘍、イレウス/腸閉塞、再手術)が有意に少ないことが明らかになりました。[203]。

保存的治療の治療失敗のリスク

HornらによるNational Inpatient Sample(NIS)の大規模なシリーズでは、ドレナージを受けた虫垂膿瘍の合計2,209人の成人患者の25.4%が症状改善せず、手術を受けました[204]。

現在のエビデンス

現在のエビデンスでは、虫垂膿瘍を呈する患者の治療は、入院期間の短縮や再入院の可能性の観点から、抗生物質指向の治療によるnon-operative management(待機的虫垂切除術)よりも即時腹腔鏡下虫垂切除が望ましいことを示しています[205]。

Youngらによる後方視的研究では、即時虫垂切除術はnon-operative management(待機的虫垂切除術)と比較して優れた結果を示しています。複雑性急性虫垂炎を呈する95人の患者のうち、60人が即時虫垂切除術を受け、35人がnon-operative managementを受けました。non-operative managementの失敗を経験したすべての患者(25.7%)は、大部分が腸切除を必要とする開腹手術を受けました。即時虫垂切除では、最初にnon-operative managementを受けたすべての患者と比較して、腸切除の率が低いことが示されました(3.3%vs 17.1%、P = 0.048)。

Gavriilidis らによる累積メタ分析で、複雑性急性虫垂炎の管理のための腹腔鏡アプローチが広く行われていることが示されています。全体的な合併症(腹部/骨盤膿瘍、創傷感染、予定外の手技)は、保存的治療で有意に低かったものの、3つのランダム化比較試験のサブグループ分析では、腹部/骨盤膿瘍に有意差は認められませんでした(OR 0.46 )。質の高いランダム化比較試験では、腹腔鏡下虫垂切除は、保存的治療と比較して入院期間が1日半短くなりました[207]。

Chengらによって発表された2017年のコクランレビューの結果によると、虫垂の蜂窩織炎や膿瘍のある人に対して、遅延手術(待機的虫垂切除術)と比較して、早期虫垂切除術が合併症を減らすかどうかは不明です。

このレビューには2つのランダム化比較試験が含まれ、対象は合計80人でした。

虫垂蜂窩織炎の早期対遅延の開腹虫垂切除術の比較には、40名の対象者(小児および成人)が含まれ、早期虫垂切除術(虫垂切除が同じ入院内。炎症が解消するとすぐに虫垂切除術、n = 20)または遅延虫垂切除術(保存療法後、6週間後に虫垂切除術を行い、n = 20)のいずれかに無作為化されました。

全体的な合併症率(RR 13.00)、創部感染(RR 9.00)、糞便瘻(RR 3.00)に対する、早期または遅延の影響を判断するには、証拠が不十分でした。

早期虫垂切除群では、入院期間と、日常生活に戻るまでの期間が長くなりましたが、エビデンスの質は非常に低品質でした。

虫垂膿瘍の早期腹腔鏡下虫垂切除術と遅延腹腔鏡下虫垂切除術の比較には、40人の小児患者が含まれました。そして、それぞれ、早期虫垂切除術(緊急腹腔鏡下虫垂切除術、n = 20)または遅延虫垂切除術(初期保存的治療とその後の10週間後の腹腔鏡下虫垂切除術、n = 20)のいずれかに無作為化されました 。

虫垂切除術後12週目に測定された健康関連のQOLスコアは、早期虫垂切除群の方が遅延群よりも高くなりましたが、エビデンスの質は非常に低品質でした[208]。

逆に、Mentulaらによる高品質のランダム化比較試験(コクランのレビューには含まれていませんでした)では、経験豊富な外科医による腹腔鏡虫垂切除は虫垂膿瘍の安全で実現可能な一次治療であることが実証されました。

この研究では、初期の腹腔鏡虫垂切除は、同等の入院期間で、保存療法よりも少ない再入院・追加介入と関連していました。

腹腔鏡下虫垂切除後の予定外の再入院患者は有意に少なくなりました(3%対27%、P = 0.026)。

腹腔鏡群の7%および保存治療(経皮的ドレナージ)群の30%で、追加の介入が必要でした。

開腹手術への転換は、腹腔鏡群の10%と保存治療群の13%で必要でした。

順調な回復率は、腹腔鏡群では90%、保存治療群では50%でした(P = 0.002)[209]。

ドレナージと抗生物質の比較

Luo らは、台湾で2007年から2012年の間に虫垂膿瘍に対して非外科的治療を受けた18歳未満の1,225人の患者の転帰を分析しました。著者らは、経皮的ドレナージ+抗生物質での治療群を抗生物質単独群と比較しました。

虫垂膿瘍を患っている6,190人の子供のうち、1,225人の患者が非手術治療を受けました。経皮的ドレナージ+抗生物質で治療された患者は、経皮的ドレナージ治療を受けなかった患者よりも、急性虫垂炎の再発率が大幅に低下し、待機的虫垂切除術を受ける機会が大幅に減少し、待機的虫垂切除術後の合併症が大幅に減少しました。さらに、経皮的ドレナージで治療された患者は、後で虫垂切除術を受けることが有意に少なくなりました[210]。

小児の場合

最近の2つのメタ分析では、蜂窩織炎や膿瘍のある急性虫垂炎に対しての、小児における早期虫垂切除術の役割が取り上げられています。 

Fugazzolaらによるメタ分析では、虫垂膿瘍や蜂窩織炎の小児は、non-operative managementで治療した場合、合併症率と再入院率の点でより優れた結果となりました[211]。

同様に、Vaosらによるメタ分析では、nom operative managementは合併症や創部感染の発生率の低下と関連していました。腹腔内膿瘍と術後イレウスの発生には影響しませんでした[212]。

どちらのメタ分析でも、早期虫垂切除は入院期間の短縮と関連していました。

まとめ

非手術的管理は、蜂窩織炎や膿瘍を伴う虫垂炎の合理的な第一選択となる治療です。経皮的ドレナージは、有益である可能性がありますが、日常的に使用するためのエビデンスはまだありません。

経験豊富な外科医による腹腔鏡下手術は、虫垂膿瘍の安全で実現可能な第一選択治療です。同等の入院期間で、保存的治療よりも再入院および追加介入が少なくなります。

→腹腔鏡に慣れた施設でなければ、抗生物質と、(可能なら)経皮的ドレナージによる非手術的管理が推奨されます

[QoE:中程度;推奨の強さ:弱い。 2B]。

蜂窩織炎または膿瘍を伴う急性虫垂炎の手術は、経験豊富な外科医であれば安全な治療手段となりえます。入院期間の短縮、再入院の必要性の減少、保存的治療よりも追加の介入が少なくなる可能性があります。

→高度な腹腔鏡の専門知識があれば、蜂窩織炎や膿瘍を伴う複雑な虫垂炎に対する最適な治療法として、腹腔鏡手術が推奨されます。

[QoE:中程度。推奨の強さ:弱い。 2B]。

参考文献

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