人間工学(エルゴノミクス)を知り手術のパフォーマンスを向上させる

外科

手術では、長時間同じ姿勢を強いられます。その姿勢と手術のパフォーマンスに関係があると意識したことがあるでしょうか?

無理な姿勢では、脳が混乱してしまい、うまく手を動かすことができなくなってしまいます。

エルゴノミクスについて知り、楽に良い手術ができるようになりましょう。

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エルゴノミクス(人間工学)

腹腔鏡手術には開腹手術に比べて多数のメリットがあります。
ただし開腹手術にはない多数の制限もあります。

  • ポートによる操作角度の制限
  • 姿勢の制限
  • 視野の制限

などが挙げられます。

姿勢の影響で身体や精神に不要な負担がかかると、手術のパフォーマンスに影響します。

例えば、頭を側屈するだけでも、手を意図通りに動かすことは途端に難しくなります。人間の姿勢を最適化する道具や環境を調整することでパフォーマンスを最適化することを研究する学問にエルゴノミクス(人間工学)があります。

エルゴノミクスの観点を持ち、術中の姿勢を最適化することで、手術のパフォーマンスを向上させられる可能性があるので、外科医はぜひ知っておくべき知識です。

人間工学的と腹腔鏡手術

操作角(manipulation angle)

操作角は2つの操作鉗子がなす角度のことをいいます。

Hannaらによる結紮などの外科的テクニックのパフォーマンスを調べた研究では、最適な操作角は60度であることがわかりました。

Optimal port locations for endoscopic intracorporeal knotting
操作角は60度から±15度までは許容されますが、それを超えて、45度未満または75度以上の操作角度になる場合はパフォーマンスが低下することが分かりました。

方位角(azimuth angle)

方位角は、元々は基準となる方位との間の角度のことですが、ここでは、カメラと操作鉗子との間でなす角度のことを言います。
2つのポートの間で方位角がほぼ等しくなるのが最適であることが分かりました。
2つの方位角が等しくないと、パフォーマンスがやや低下しました(操作時間延長あり、結紮の質は低下せず)。

仰角(elevation angle)

仰角は水平面と鉗子とがなす角度です。
これは60度が良いとされますが、操作角と等しくなるように設定されると理想的です。
つまり、両手が離れるほど鉗子を立て、両手が近くほど鉗子を寝させるということです。

人間工学的に最適な鉗子の角度

  • 操作角 60度 45〜75度
  • 方位角 30度 左右で等しいのが理想的
  • 仰角 60度 操作角と等しいのが理想的

姿勢についての留意点

頭部の向きや手の角度、姿勢などが影響します

顔の向き

モニターは体の正面に正対するのが理想的です。

右でも左でも、モニターが体の正面から左右にずれるとパフォーマンスが低下します。

また、モニターは視線をやや落とす程度が最適です。モニターの上縁が視線の高さにくる程度に調整しましょう。
視線が上に向くようだとパフォーマンスが低下します。

モニターまでの距離は1m程度が最適です。

脊椎はニュートラルポジションに保つ

人体のうち、頭部は非常に重たい部分です。

その重たい頭部を、重心である骨盤の鉛直方向上にきれいに乗せておくのとそうでないのとでは、術後の疲労感に雲泥の差が生まれます。

頭が脊椎の軸からずれると後頚部や腰部などに強い負担がかかります。

視線と姿勢を矯正するためにも、開腹手術ではぜひルーペ(拡大視鏡)を装着しましょう。

 

フットスイッチを押す足は体の軸から外れても構いませんが体重を支える足は脊椎の軸の上に乗るようにしましょう。
また、骨盤が左右に傾き、脊椎が側弯すると体に強い負担がかかるので注意しましょう。

その姿勢を維持したままでジャンプができるような姿勢が最適です。

前腕水平に近くなるように、手術台の高さを調節しましょう。
肘の角度は90度から120度の間が最適と言われています。

前腕は90以上に回内・回外しないようにしましょう。
左右の手のひらが向かい合うようなニュートラルポジションが最適です。

手関節

手関節は背屈しないようにしましょう。
ニュートラルポジションが最適ですが、45度程度までの掌屈は許容範囲内です。

まとめ

姿勢は手術のパフォーマンスに影響を及ぼす。

姿勢を最適化することで、手術パフォーマンスの向上や疲労の軽減といった効果が期待できる。

無理のない自然な姿勢を意識する。

外科
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