機能的端々吻合には本当にたくさんのメリットがあります。
腹腔鏡やロボットなどによる手術が全盛の現在。今や機能的端々吻合なしでは外科手術は成立しません。
この記事では、
こんな疑問に答えます。
はじめに結論のまとめです。
手縫い吻合に比べて、機能的端々吻合には以下のようなメリットとデメリットがあります。
機能的端々吻合のメリット
- 吻合が短時間で完了する
- 吻合口が広い
- 異なる口径の腸管同士も吻合しやすい
- 手技が手縫いより簡便で、吻合の質が安定しやすい
機能的端々吻合のデメリット
- 費用が高い
- ステープルラインの交差点が脆弱
- 吻合部の股となる部分が脆弱
この記事を読めば、機能的端々吻合がいかに便利かを改めて思い知り、もう手縫いには戻れなくなることでしょう。
ぜひ最後まで読んでみてください。
機能的端々吻合のメリット
最初に一覧にすると、機能的端々吻合のメリットは以下の通りです。
- 吻合が短時間で完了する
- 吻合口が広い
- 異なる口径の腸管同士も吻合しやすい
- 手技が手縫いより簡便で、吻合の質が安定しやすい
以下でそれぞれ見ていきます。
吻合が短時間で完了する
まずは時間的なメリットです。
手縫いだと、当然ながら全周をひとつひとつ縫合していく必要があります。
糸をかけて、糸を結んで…という作業が大量に発生します。
連続縫合だといくらか時間は短縮できますが、それでも機能的端々吻合でガッチャン、ガッチャンと済ませるのには到底敵いません。
吻合口が広い
機能的端々吻合は、解剖学的には側々吻合です。
そのため、吻合口径が腸管径に依存しません。
ステープラーの長さ(約60mm)分の吻合口が安定的に確保できます。
一方の手縫い吻合は元々の腸管の直径に吻合口の口径が大きく影響されます。
一般に小腸の直径は15〜30mmほどなので、狭くはありません。
しかし、10mmくらいの細い症例も珍しくはありません。これでは流石に少し狭窄が心配です。
また、手縫いのように、縫合で糸を大きくかけ過ぎ(バイトが大き過ぎ)たり、連続縫合の糸を締めすぎたりして、人為的に狭窄を起こすリスクも少ないです。
異なる口径の腸管同士でも吻合しやすい
右半結腸切除の回腸-結腸吻合や、絞扼性腸閉塞の小腸-小腸吻合をイメージしてみてください。
かなり腸管の口径に差があります。
手縫いによる端々吻合だと、細い方の腸管の切離を斜めにして、口径差を補正するという一手間がかかります。
解剖学的には側々吻合である機能的端々吻合では、いつもと同じように吻合することができます。
手技が簡便で、質が安定しやすい
個人的にはこれが最高のメリットだと思います。
機能的端々吻合はとにかく簡単です。
手縫いに比べて、圧倒的に楽チンです。
例えば真夜中の絞扼性腸閉塞。
もし小腸切除になったら、吻合は機能的端々吻合一択でしょう。
深夜にツラツラと手縫い縫合をするなんてとても考えられません。
あとは、質の担保も良いところです。
もしもほぼ素人の初期研修医と吻合しろ、と言われたら…手縫いは絶対無理です。
だけど機能的端々吻合ならちゃんと吻合できると思います。
機能的端々吻合のデメリット
機能的端々吻合にも以下のようなデメリットがあります。
- 費用が高い
- ステープルラインの交差点が脆弱
- 吻合部の股となる部分が脆弱
費用が高い
これが最大の弱点です。
高い!圧倒的に高い!!
正確な値段は覚えてないですが、確か糸が5000円くらいなのに対して、ステープラーのカートリッジ4発で8万円くらいしたと思います。(お値段分かる方がいらっしゃれば教えて下さい)
手術による収益は保険点数で決められているので、手縫いの方が利益が大きいのは確かです。
一応、保険で認められた分のカートリッジの点数は加算されるのですが、その加算されたお金の出所は我らの税金です。
ステープルラインの交差点が弱い
交差点の部分は分厚くなりやすいので、組織が脆弱化したり、血行が悪くなりやすいです。
通常は、漿膜筋層縫合で内反させて補強するので、少しの手間をかければ解消できるデメリットです。
吻合部の股となる部分が弱い
吻合部の股は、ステープルがペタッと面で密着しているわけではなく、点線でしか留まっていません。
そのため、引き裂く力に対しての抵抗力が弱いです。
こちらも、吻合部の股の部分の漿膜筋層を縫合すれば補強されるので、ひと手間かければ解消できるデメリットです。
まとめ
最後に、この記事の内容のまとめです。
機能的端々吻合のメリット
- 吻合が短時間で完了する
- 吻合口が広い
- 異なる口径の腸管同士も吻合しやすい
- 手技が手縫いより簡便で、吻合の質が安定しやすい
機能的端々吻合のデメリット
- 費用が高い
- ステープルラインの交差点が脆弱
- 吻合部の股となる部分が脆弱
結局のところ、どんな状況でも、頭を使わなくても、技術が多少拙くても、ちゃんと吻合できるのが機能的端々吻合の良いところです。
医療費は高くなりますが、直接自分の財布が痛むわけでもないので、正直なところ気になりません。
さらに興味がある方は、こちらの記事も参考にして下さい。
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参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcs1979/25/2/25_2_157/_pdf/-char/ja
2) Chassin J L, Rifkind K M, Turner J W : Errors and Pitfalls in Stapling Gastrointestinal Tract Anastomoses. Surg Clin North Am 64: 441- 459, 1984
3) Osstericher R, Lally K P, Barrett M et al: Anastomotic obstruction after stapled enter- oamastomosis. Surgery 109:799-801, 1991