『動画付き』デルタ吻合の手技を手順を追って動画とイラストで解説

デルタ吻合外科

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デルタ吻合とは

デルタ吻合とは、胃癌などに対して行われる幽門側胃切除術の再建法のひとつです。

腹腔鏡手術の発展によって、腹腔内での再建法が必要となり、ビルロート I 法(B I法)に似た再建ができるように、金谷誠一郎先生によって開発された吻合法です。

近年では、ロボット(ダビンチ)を用いた手術においても活用されています。

デルタ吻合は、吻合口の形が三角形になることからその名前が付けられました。(なお、三角吻合という吻合法もありますが、これは結腸の手術などで用いられる端々吻合の一種であり、機能的端々吻合の一種であるデルタ吻合とは本質的に異なります)

デルタ吻合の手術手技

では、実際のデルタ吻合の方法をイラストを交えつつ、手順を追って解説していきたいと思います。

十二指腸の切離

幽門下の郭清後、十二指腸の頭側の間膜を開窓しておきます。これがステープラーの挿入口となります。

そこにステープラーを挿入して十二指腸を切離するわけですが、ここで大切なポイントがあります。

それは、十二指腸が後壁→前壁方向に切れるように、90度ローテーションさせた状態で切離することです。

ここで十分に捻ってから切離しておかないと、後の残胃・十二指腸吻合のステープルラインと、この十二指腸の切離ラインが平行になってしまい、血流不全の原因となってしまうので注意が必要です。

デルタ吻合

後壁→前壁方向に切離する。胃の後壁および前壁をそれぞれ把持して、90度ローテーションさせてから切離する。

十二指腸が短くなりすぎると吻合部に緊張がかかったり、吻合の際の可動性が悪くなるので、切離ラインはなるべく幽門付近に設定します。

ステープラーのジョーを軽く閉じて幽門側に滑らせていき、引っ掛かったところで切離すると良いでしょう。

当然のことながら、ステープラーが胃管を噛み込んでいないかどうか、ファイア前に確認して下さい。

デルタチェック

胃の切離後、吻合に入る前に、通称「デルタチェック」を行います。

デルタチェックは、吻合が緊張なく行えるかどうか判断するスクリーニング法です。

十二指腸断端と残胃断端を膵頭部辺りで交差させてみて、緊張が過度にならないか確認します。

もし緊張が強ければ、剥離できる癒着は剥離します。それでも緊張が強ければ、無理せずビルロートⅡ法やルーワイ法に変更しましょう。

十二指腸が短くなりすぎると吻合部に緊張がかかったり、吻合の際の可動性が悪くなるので、切離ラインはなるべく幽門付近に設定します。

デルタ吻合

デルタチェック 十二指腸後壁と残胃大弯を膵頭部辺りで交差させてみて緊張を確認する。

各断端に小孔を設ける

十二指腸後壁と残胃大弯に小孔を設けます。

まず、術者が、ステープルラインの端を挙上します。

次に、助手に、小孔から内容物が漏れないように小孔作成予定部の付近を鉗子でクランプしてもらいます。

その上で、ステープルラインのすぐ傍を狙って、壁を切って、小孔を作成します。

十二指腸は壁が薄いので、孔が大きくなり過ぎないように注意します。ステープラーが挿入できるだけの、必要最低限の大きさ(1cm程)が理想的です。

胃は壁が厚いので、超音波凝固切開装置のアクティブブレードを深く突き刺して、一気に全層切るようにします。下手に少しずつ切るとなかなか粘膜まで切れず、孔が大きくなり過ぎる恐れがあります。残胃側の孔は1.5cm程の大きさが良いです。

小孔を設けたら、吸引管を装備して、助手のクランプを緩めてもらいつつ、内腔の吸引を行います。

癌を播種させないためにも、内容物をこぼさないという意識で行ってください。

残胃へのステープラー挿入

吻合時は45mm長のカートリッジを用います。

まずは、ステープラーを挿入します。

術者が残胃のステープルラインをそれぞれの手で2箇所把持して、直線化し、ステープラーと残胃との軸を合わせます。

軸が合ったら、ステープラーをゆっくり奥に挿入し、残胃内にステープラーを挿入します。残胃側には、カートリッジフォーク(太い方)を挿入しましょう。

続いて、後壁で吻合できるように、残胃をローテーションさせます。

術者は両手でステープルラインをもっているはずなので、そのまま前壁側に持ち上げつつ助手側に押すようにしてローテーションを行います。

ステープラーは必要に応じて少し回転させ、後壁で吻合されるようにしておきます。

良い角度までローテーションできたら、いったんステープラーを甘噛みして残胃をキープしておきます。

その上で、助手は、小孔から少し離れたところのステープルラインを把持します。ここからはこの助手の右手1本で、残胃が抜けないようにしつつローテーションが戻らないようにしなければなりません。

助手が右手でステープルラインを把持したら、術者はステープルラインから両手を離します。

デルタ吻合

残胃にステープラーを挿入後、ローテーションさせる

十二指腸へのステープラーを挿入

まず、助手が、残胃からステープラーが抜けないことと、残胃のローテーションが戻らないことを意識しつつ、ステープラーと残胃を、吻合を行う場となる膵頭部前面まで持ってきます(ステープラーを甘噛みしたままにしておくと確実)。

良い位置まで来たらステープラーのジョーを再度開いて待ちます。ここからは下手に助手は動かないようにします。

続いて、術者が、十二指腸断端のステープルラインの両端をそれぞれ持って、十二指腸断端を直線化して軸を合わせつつ、「靴下を履かせるように」十二指腸内にステープラーを挿入していきます。「ステープラーを十二指腸内に差し入れる」のではなく、「十二指腸の方をステープラーに被せていく」という意識が重要です。

デルタ吻合

術者は十二指腸をアンビルフォークに被せる。助手は残胃が抜けないように注意する。

吻合

ステープラーが良い位置まで挿入されたら、残胃および十二指腸のそれぞれの後壁が吻合部となるように、術者は十二指腸をローテーションさせます。

両者の後壁がきちんと合った状態ができれば、ファイアします。

デルタ吻合

両者の後壁を合わせて吻合する。

共通孔の閉鎖

まず3針糸をかけて、共通孔を仮閉鎖します。

ステープルラインがずれるように、真ん中をまず縫うのがお勧めです。

また、真ん中を先に縫っておくと、術野が展開しやすく、手前と奥も縫いやすくなります。

必ず、漿膜〜粘膜まで、全層取りこぼさないで縫いましょう。

仮閉鎖が済んだら、60mmのカートリッジで共通孔を閉鎖します。

かけておいた糸を挙上して、ステープラーとの軸が合うように調整します。

どこか1カ所の糸を挙上しすぎてもうまくいかないので、術者と助手がコミュニケーションを取りあって、バランスよく挙上しましょう(「手前上げて、奥を下げて」などの声かけを適宜行うこと)。

60mm1回で閉鎖できることも多いですが、足りなければもう1発45mmなどを追加しましょう。

デルタ吻合

仮閉鎖した糸をうまく使って共通孔を閉鎖する。

出来上がり

共通孔を閉鎖して切り落とした断端が全層取れているかを確認しましょう。

もし不安な点があれば手縫い縫合を追加して補強します。

また、膵にステープルが接触しない方が良いという意見もあり、膵と接触するステープルラインは漿膜筋層縫合を用いて埋没する方が良いかもしれません。

デルタ吻合

デルタ吻合の出来上がりの状態。

まとめ

デルタ吻合は腹腔内で鉗子を用いて行う方法であるため、ひとつひとつの操作を、手順を追って積み重ねていく必要があります。

行うべき操作が完遂されないままに次の操作へと流れていくと、最終的には大きな綻びとなってしまいます。

ステップバイステップで操作を進めましょう。

また、デルタ吻合は助手にも一定以上のスキルが必要されるため、チームとしてこの吻合法に習熟していることが求められます。

事前にビデオやテキストでしっかり予習してから挑みましょう。

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