正常な虫垂を”ついでに”切除するincidental appendectomyが妥当な患者とは?

incidental appendectomy外科

急性虫垂炎は緊急開腹手術の最も一般的な適応であり、世界で最も頻繁に行われている手術の一つ。

正常な虫垂を”ついでに”切除することをincidental appendectomyと呼び、婦人科、泌尿器科、消化器外科の手術中に急性虫垂炎の予防として実施されることがあった。実際のところincidental appendectomyは、妥当なのだろうか?

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incidental appendectomyのメリット

  1. テクニック的に簡単に切除できることがほとんど。複雑な急性虫垂炎の既往でもなければ、(とくに開腹手術であれば)虫垂は容易に切除可能である。
  2. 合併症の発生率が低い。容易に虫垂切除ができた場合、ほぼ術後合併症で悩まされることはない。
  3. 追加で麻酔をかける必要がない。もし虫垂を残して急性虫垂炎に罹患した場合、虫垂切除術のために改めて麻酔を行う必要が発生する。

incidental appendectomyのデメリット

  1. 術野汚染のリスクがある。虫垂断端は清潔ではないため、術野汚染のリスクがゼロではない。
  2. 合併症のリスクがある。発生率が低いとはいえ、追加で何かの手技を行う場合、合併症が起こる可能性はゼロではない。
  3. 虫垂の免疫器官としての働きが失われる可能性がある。IgAの分泌や細菌のプールとしての役割などが虫垂にはあるとされており、その機能が失われる可能性がある。

虫垂炎と虫垂切除の疫学

1979年から1984年の間に、米国では約340万件の盲腸手術が行われ、これは年間約56万1,000件、または人口1万人あたり26件の発生率を占めていた。発生率が最も高かったのは10~14歳の男性、15~19歳の女性であった。

いくつかの研究では、虫垂炎と虫垂切除の生涯リスクが計算されている。

虫垂炎の生涯リスクは、男性で8.6%、女性で6.7%とされる。全体として、米国では男性の2.9%、女性の16%がincidental appendectomyを受けた可能性がある。
韓国における5歳未満の子供の虫垂切除の生涯リスクは、男性9.8%、女性9.6%であった。虫垂炎の生涯リスクは男女ともに16.3%であった。

虫垂の機能について

虫垂はリンパ組織で構成され、体内の免疫グロブリンA(IgA)産生の主要部位である。虫垂は二次的なリンパ器官と考えられている。

また、虫垂は、生体バリアを形成する多様で保護的な腸内細菌叢を育む場である。病原性細菌への曝露により、下痢中に大腸内に存在する常在菌が枯渇した場合、虫垂の微生物相が大腸の微生物相を補充することができる可能性がある。

虫垂を摘出すると、潰瘍性大腸炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発、心筋疾患や炎症性疾患のリスクが高くなることが報告されている。ただし、それにもかかわらず、ほとんどの人が虫垂がなくても影響を受けずに生活できることも報告されている。

虫垂手術に伴う合併症率

偶発的な盲腸手術の安全性と術後転帰への影響については、まだ見解が定まっていない。

incidental appendectomyの費用対効果

費用対効果が重要な問題となる。

杉本とエドワーズによる1979年から1981年にかけての研究では、予防的な虫垂切除の費用が全国的に700万ドル近くかかったと報告されている。しかし、incidental appendectomyの標準的な費用を10%と仮定すると、その費用は2,000万ドル以上になっていたことになる。

2001年にWangとSaxが腹腔鏡下手術と開腹手術でのincidental appendectomyの費用対効果の分析を行った。腹腔鏡下手術では、どの年齢層でも節約効果は示されなかった。しかし、開腹手術中に実施した場合、25歳未満の若年層では費用対効果があった。

同様の分析はAlbrightらによって1999年から2006年の間に行われた。55歳以下の男性と50歳以下の女性では、良性疾患で開腹手術中のincidental appendectomyは費用対効果があった。悪性疾患の患者では、45歳未満の男女で費用対効果があった。

費用節約のマージンは残存生存年数に依存する。

incidental appendectomyの術後の病理組織学的所見

病理学的所見の異常はincidental appendectomyを支持する証拠となる。

韓国で切除した2,159個の虫垂を対象に478例の病理学的解析を行ったところ、478例中397例(83.1%)は正常だった。病理学的所見は、内腔の線維性閉塞が40例(8.4%)、盲腸周囲炎が32例(6.7%)であった。急性局所性虫垂炎は3例(0.6%)、粘膜炎は1例(0.2%)であった。
Albrightらは18年間のincidental appendectomyの病理学的調査を行ったが、75.1%の検体に病理学的異常所見は認められなかった。内腔の線維性閉塞は20.5%に認められた。粘液性の嚢胞腺腫や粘液嚢胞は1.2%、カルチノイド腫瘍は0.9%に認められた。

 

随伴性虫垂切除術(incidental appendectomy)の適応の案

incidental appendectomyは一般的に、臨床的にも経済的にも利益ははっきりせず、必要とは言えない。

ただし、特別な患者群の中には開腹手術や腹腔鏡下手術の際に、困難な状況でなければincidental appendectomyを行うことを考慮すべき患者群もある。

すなわち、

  • 化学療法を受ける予定のある小児
  • 症状を説明できない、または腹痛に正常に反応しない患者(高齢者、脳神経疾患や精神疾患の患者)
  • クローン病患者
  • 医療や外科的ケアへのアクセスが困難な地域の居住者

などである。

ちなみに、腸回転異常の場合、虫垂が解剖学的に通常の位置になく、急性虫垂炎の診断が困難であるため、Ladd手術の際に、incidental appendectomyはすでに日常的に実施されている。

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