複雑性虫垂炎の術後腹腔内膿瘍は洗浄で減らせるか?【ガイドライン】

外科

複雑性急性虫垂炎に対して、『ドレナージのみ』と『洗浄+ドレナージ』とを比較した場合、術後の腹腔内膿瘍の発生率は差が出るのでしょうか?

今回はこの辺りの疑問について、エルサレムガイドラインを参考に見ていきたいと思います。

Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines

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洗浄しても術後腹腔内膿瘍は大して減らないかもしれない

入手可能な最良のエビデンスは、腹腔鏡下虫垂切除術の際に、生理食塩水による腹膜洗浄を行うことは、腹腔内膿瘍、手術部位感染、入院期間の点で、ドレナージのみと比較して追加のメリットがなく、手術時間が延長すると示唆しています。

5つの研究からの2500人を超える患者を対象とした、Siotosらによるメタアナリシスでは、手術時間に7分を追加したにもかかわらず、洗浄を行っても腹腔内膿瘍は有意に減少しませんでした。

成人と小児の両方のサブグループで、洗浄は腹腔内膿瘍を有意に減らすことはありませんでした[158]。

同様に、Hajibandehらによる大規模なメタ分析(3つのランダム化比較試験と2つの遡及的観察研究を含む)でも、腹腔内膿瘍率、手術部位感染、入院期間の点で、腹腔洗浄ドレナージとドレナージのみの間に有意差がないことを示しました。

ランダム化比較試験、成人患者、小児患者を別々に分析した場合でも、これらの結果は一貫していました[159]。

今後のエビデンスの集積に期待

ただし、この点に関する入手可能な最良のエビデンスの質は中程度です。

したがって、明確な結論のためには、今後の高品質で適切なパワーのランダム化試験が必要です。

まとめ

腹膜洗浄ドレナージは、ドレナージのみと比較して、成人と小児の両方で、複雑性虫垂炎の腹腔内膿瘍や手術部位感染手術部位感染を減らしませんでした。

→腹腔鏡下虫垂切除術を受けた複雑性急性虫垂炎患者では、洗浄なしのドレナージ単独が推奨されます。

ただし、明確な結論には、今後の質の高いエビデンスを待つことが賢明です。

[QoE:中程度;推奨の強さ:強い; 1B]。

 

※急性虫垂炎によって起こる術前の膿瘍は、比較的局在化していることが多く、そのため洗浄を加えても効果があまり出なかったのかもしれません。

腹腔内全体に汚染が広がっているような場合は、(例え術後の腹腔内膿瘍を減らすかどうかは定かでないとしても、)汚染の軽減のために、十分に術中に洗浄すべきだと個人的には思います。

参考文献

158.

Siotos C, Stergios K, Prasath V, et al. Irrigation versus suction in laparoscopic appendectomy for complicated appendicitis: a meta-analysis. J Surg Res. 2019;235:237–43.

PubMed Google Scholar

159.

Hajibandeh S, Hajibandeh S, Kelly A, et al. Irrigation versus suction alone in laparoscopic appendectomy: is dilution the solution to pollution? A systematic review and meta-analysis. Surg Innov. 2018;25:174–82.

PubMed Google Scholar

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