腹腔鏡下胆嚢摘出術における ss-i(subserosal layer inner : 漿膜下層の内よりの層)とは?

外科

 

 

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胆嚢壁の外科解剖

胆嚢壁のSS層(漿膜下層)を2つの層に分割するという外科的解剖学の定義をまずは知っておく必要がある。

組織学的には、胆嚢壁のSS層は、血管組織と豊富な線維組織からなる内層(SS-Inner)と、脂肪組織と線維組織からなる外層(SS-Outer)に分けることができる。

胆嚢周辺の脂肪組織、すなわちSS-Outerの大部分を切除することで、表面に光沢があり、網目状の血管構造が見えるSS-Innerが露出する。

正常な胆嚢壁の顕微鏡写真。コラーゲン繊維がMasson染色で青く染色されている。漿膜下層(SS)はSS-InnerとSS-Outerに分けられることがわかる。

SS-Inner層は血管組織と豊富な線維組織から構成される。

SS-Outer層は脂肪組織と線維組織からなり、一部の血管がまばらに走っている。

SS-Inner層の線維組織は層状に積み重なっているように見えるが、実際はまばらに分布している。特にSS-Outer層の最内周部には、図中の矢印で示すように分布している。

 

基本的な手術手順

ハルトマン嚢を挙上し、ルビエール溝を同定する。その上側(腹側)で、まずは胆嚢の右側で、漿膜のみを切る。

その後、脂肪組織(SS-outer層)を剥離していき、胆嚢の下側のSS-Inner層を露出させる。

 

Rouviére’s sulcus(ルビエール溝。三角矢印)を認識し、胆嚢右側の下半分のSS-Inner層を露出させる。

ルビエール溝の上側(腹側)境界は、胆嚢と後区域のグリソン鞘との境界につながる(赤点線)。この境界線の上に胆嚢体部のSS-Inner層が露出している(矢印)。このように、胆嚢周囲の脂肪組織として確認できるSS-outer層の大部分を切除することで、表面に光沢があり、網目状の血管構造が見えるSS-Inner層が露出する。

SS-Inner層の表面の光沢のある部分の周囲には、薄い膜状組織があることが多い。この薄い膜を確認しつつSS-Inner層を連続して露出できれば、LCは安全に遂行できる。

 

胆嚢周囲の漿膜とSS-outer層を鋭的に、SS-Inner層表面を鈍的に剥離することにより、露出したSS-Inner層での剥離を広げていくことができる。

ここまでで、胆嚢の外側の頸部〜体部で広くSS-Inner層を露出しておく。

胆嚢の左側でも、同様にSS-Inner層を露出させる。

最終的に両側で露出したSS-Inner層は、漏斗部や体部の裏側で交通する。

CriticalView of Safety(CVS)を確立した後、胆嚢管は切断する。

それに続いて、胆嚢の体部〜底部へ向けて、SS-Inner層での剥離が進んでいく。

 

このように基本的に、SS-Inner層を露出させ、SS-Inner層とSS-Outer層の境界に沿って剥離を進めていくこととなる。

SS-Inner層とSS-Outer層との間を一括りに剥離する。

SS-Outer層は、露出したSS-Inner層を連続して露出していくことにより、2つの層の境界に沿ってSS-Inner層から剥がれていく。

 

胆嚢炎に対する応用手技

上記の基本的な手技は、胆嚢炎でも同様に行うことができる。

胆嚢炎などで、SS-Inner層が線維化して硬くなっている場合、SS-Inner層とSS-Outer層の間の鈍的な剥離が可能である。

このような場合に、SS-Inner層とSS-Outer層の境界が見つかると、きれいに剥離できる層を鈍的にスムーズに剥離していくことができる。

ほとんどの胆嚢炎の症例では、このように、SS-Inner層とSS-Outer層の境界を見つけて、そこを鈍的に剥離していくテクニックを用いるかどうかで手術の難易度が大きく左右される。

胆嚢壁の顕微鏡写真(H&E染色)。SS-Inner層・SS-Outer層ともに炎症性細胞の浸潤と線維化により肥厚している。

漿膜とSS-Outer層を切開した境界は、上図の黄色の線で示されている。

左側には漿膜(S)とSS-Outer層が残っている。右側にはSS-Outer層の脂肪組織が疎らに残りつつ露出したSS-Inner層が観察される。

 

まとめ

胆石症や胆嚢炎に対して、腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)を安全に実施するためには、胆嚢に沿った剥離操作を続けることが重要である。

そのための手術上のランドマークとして、血管組織と線維組織からなる漿膜下層内層(SS-Inner)がある。またそのすぐ外側には、豊富な脂肪組織からなる漿膜下層外層(SS-Outer)がある。このふたつの層を認識することが安全な腹腔鏡下胆嚢摘出術を行うためのポイントである。

具体的には、SS-Inner層に沿って胆嚢を解剖することにより、胆嚢炎症例においても胆管や血管の損傷を回避することができる。

参考文献

Universal safe procedure of laparoscopic cholecystectomy standardized by exposing the inner layer of the subserosal layer (with video) - Honda - 2016 - Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Sciences - Wiley Online Library

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