ASCO2020で示された局所進行直腸癌に対するtotal neoadjuvant therapyの可能性

外科
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total neoadjuvant therapy誕生の経緯

手術に先立って化学療法を行うことで治療コンプライアンスを高めたり、微小遠隔転移を早期に制御することを可能にするために開発されたのが、ネオアジュバント化学療法(NAC)である。

局所進行直腸癌では、術前化学放射線治療も標準治療となっているため、neoadjvant chemotherapyと化学放射線治療とを組み合わせるtotal neoadjuvant therapyが誕生した。

TNT(total neoadjuvant therapy)は、化学放射線治療と化学療法を術前に行うもので、局所進行直腸癌や膵癌で効果が期待されている。

術前に全身治療を行うことで、腫瘍のダウンステージングが期待できたり、化学療法の忍容性が改善したり、微小転移を早期に制御できたりすることなどが期待されている。

徐々にTNTは多くの施設で試みられているが、これまで明確な有効性を示す前向き研究のデータはなかった。

ASCO2020 Virtual Scientific Programの注目の3つの試験

そのような経緯で、ASCO2020 Virtual Scientific Programで発表された

  • OPRA(the organ preservation of rectal adenocarcinoma ) 試験
  • PRODIGE 23試験
  • RAPIDO試験

の結果が注目された。

OPRA、PRODIGE 23、およびRAPIDO試験からの主な知見

OPRA試験:化学放射線治療が先だと臓器温存につながる

OPRA試験は、total neoadjuvant therapyにおいて、化学放射線治療と化学療法の順番による差を検討した試験である。

導入化学療法(induction)と地固め化学療法(consolidation)を比較している。

その結果、化学放射線治療→地固め化学療法を行う方が、導入化学療法→化学放射線治療を行う場合と比較して、数値的に高いwatchful wait率を示した。

OPRA試験は、Total neoadjuvant therapy後に臨床的完全奏効(cCR)を達成した局所進行直腸癌患者に対して、watchful wait(Watch and Wait とも言われる)戦略を行うことは、生存率を低下させずに、臓器温存の割合を高めることにつながることを示した。

PRODIGE 23試験:total neoadjuvant therapyか術後補助化学療法か

PRODIGE 23試験は、周術期の補助化学療法において、術前補助化学療法と術後補助化学療法のどちらが良いかを比較した試験である。

結果は、術前補助化学療法の方が、DFSやCR率を改善した。

これらの結果は、術前FOLFOXIRIの有望性を示しており、現在、化学放射線療法との併用による臓器保存的アプローチが検討されている(GRECCAR12試験など)。

RAPIDO試験:total neoadjuvant therapyか術後補助化学療法か

RAPIDO試験では、最初にショートコースの放射線療法を受け、待機期間中に化学療法を受ける場合と、術後補助化学療法を受ける場合とを比較した。

ここでもtotal neoadjuvant therapy群の方が優れた結果を示した。

すなわち、低い3年疾患関連死亡率、低い3年遠隔転移率、高い病理学的完全奏効率である。

高い完全奏効率は、臓器温存につながる可能性の向上につながるという意義がある。

TNT(total neoadjuvant therapy)の最適な方法と順序は?

Total neoadjuvant therapyは化学療法→化学放射線治療の順番で行うInduction therapyと、化学放射線治療→化学療法の順番で行うconsolidation therapyの2つのスタイルがある。

現時点で最も一般的な形式は、化学療法→化学放射線療法の順番で行うものだ。

化学放射線療法を先に行って、局所制御を重視するよりも、微小転移に早期対処することが優先されるという考え方である。

また、放射線治療の終了から手術までの期間を長くすると、骨盤の線維化や創傷治癒遅延により、手術による合併症率が高まることが懸念されているのも化学療法を先に行う理由である。

一方で、化学放射線治療を先に行うことによるメリットもある。放射線照射後、効果が十分に発揮されるまでは、12〜16週間ほどかかることが分かってきており、先に放射線治療を行って、手術までの時間を延長することで、腫瘍のダウンステージのための時間を十分確保し、完全奏効率を高めるという考え方も可能である。

どちらが良いかは、今後の検討課題である。

TNTで使用するのに最適な放射線療法のレジメンは?

短期間放射線療法は、German Rectal Cancer Studyで確立された長期化学放射線療法に代わるものである。

当初、ショートコース放射線療法では腫瘍のダウンステージングが得られず、低位の腫瘍では予後が劣るという懸念があったが、手術の前にショートコース放射線を照射した後に待機期間を加えることで、化学放射線療法と同等の予後が得られている。この試験では、T4a/bまたはN2病変、血管浸潤、直腸間膜の境界までの浸潤、側方リンパ節腫大などの高リスク因子を有する患者が登録されていた。しかし、ショートコース放射線を用いたtotal neoadjuvant therapyで、これらの患者の26.6%がpCRを達成したことは意義深い。

ショートコース放射線は、コンプライアンスを向上させたり、化学療法をしていない時間を最小限に抑えるというメリットがある。

一方で、ショートコース放射線では、長期的な合併症も懸念されている。オランダの大腸癌グループのTME試験でショートコース放射線治療を受けた患者は、TME単独治療を受けた患者に比べて、長期的な腸管機能障害が多かった。ただし、Trans-Tasman Radiation Oncology Groupの試験では、ショートコース放射線とロングコース放射線の間に晩期毒性の差は認められなかった。

まとめ

直腸癌に対するネオアジュバント療法は多くの施設で標準治療となっているが、これまで明確な効果を示すプロスペクティブデータはなく、OPRA、RAPIDO、PRODIGE 23の結果がASCO20 Virtual Scientific Programで発表された。

今日の直腸癌の管理には、局所と遠隔転移の両方の病勢制御と、患者のQOLとの間のバランスの調整が必要である。

ASCO2020 Virtual Scientific Programで発表されたデータは、局所進行直腸癌に対してtotal neoadjuvant therapyを行うメリットが大きいことを示唆している。

さらに、ショートコース放射線を用いた早期の放射線治療、化学療法のエスカレーション、臨床的完全奏効を得た患者に対する手術の省略が最適なアプローチとなる可能性がある。

OPRA、RAPIDO、PRODIGE 23試験は、局所進行直腸癌に対する「全く新しい治療」戦略につながる可能性を示したことに意義がある。

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