この記事では、
こんな疑問に答えます。
はじめに結論のまとめです。
この記事を読めば、自動縫合器と自動吻合器の違いが良くわかり、使用する場面の迷いがなくなります。
ぜひ最後まで読んでみてください。
ステープラーとは
最初に前提となる知識の説明からです。
『そもそもステープラーって何よ?」と最初は思いませんか?
僕は思いました笑
一般的には、ステープラー(stapler)とは、コの字型の金属をB字型に曲げることで紙を束ねる、『文房具のホチキスのこと』です。
ただし、手術室においてステープラーと言えば、自動縫合器や自動吻合器など、ホチキスとナイフを合体させた器械の総称を指します。
(もしくはスキンステープラーという皮膚閉鎖用のホチキス型の器械をステープラーと呼ぶこともあります)
自動縫合器と自動吻合器は、違いが分かりにくいかと思います。
- 名前が似ている
- 消化器外科領域では、どちらも吻合に使用する
上記が、自動縫合器と自動吻合器が混同して認識される理由です。
自動縫合器とは
自動縫合器は、linear stapler(リニアステープラー)と呼ばれる直線型自動縫合器のことを指します。
2−3列のステープルが1対あり、その間をカッターナイフが走ります。
組織を切断・切離すると同時に、切られた組織の断端を閉鎖することができます。
そのため、結紮や鉗子での遮断なしでも、腸液や血液などをこぼさずに切ることが可能です。
12mmのトロッカーから挿入可能なため、腹腔鏡やロボットなどの鏡視下手術と非常に相性が良いのが特長です。
現在は、消化管や肺や血管など様々な組織の離断や切離、消化管の吻合などに幅広く用いられています。
例えば、
- 腸管を切断する
- 虫垂を間膜ごと切離する
- 肝静脈を切離する
- 胆嚢管を切離する
- 機能的端々吻合を行う
などなど、たくさんの使い道があります。
ここ数年で、ステープルが3列になってより強固なステープリングが可能となったり、先端が屈曲して、より狭い場所での使用が可能となったり、電子制御化されて、より精緻なステープル形成ができるようになったり進化を続けています。
代表的な自動縫合器
SigniaやECHELONが代表的な機種になります。
Signia™ Stapling System
Signiaはコヴィディエン社製の自動縫合器です。
Adaptive Firing™ Technology Plus (AFT+)と言って、組織の抵抗をステープラーが感知し、最適な打針スピードに自動的に調整してくれるという機能を持っています。
Signia™ Stapling System | Medtronic
Powered ECHELON FLEX™
ECHELONはジョンソン・エンド・ジョンソン社製の自動縫合器です。
GST(グリッピング サーフェイス テクノロジー)Systemは、「ステイプルガイド」、「スマートアングル」、「クローズドレール」という3つの機能を搭載し、より適切なステープル形成ができるようになっています。
Powered ECHELON FLEX GST System | 製品情報 | エチコン | ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー
自動吻合器
自動吻合器は、circular stapler(サーキュラーステープラー)と呼ばれる環状自動縫合器のことを指します。
円形に配置された2-3列のステープルの内側にカッターがあり、組織をつないで、内腔を確保するという、吻合が簡便にできるようになっています。
ここ数年で、経口アンビルヘッドが出て、鏡視下手術への適応が広まったり、ステープルが3列になってより強固なステープリングができるようになったりと進化してきています。
消化管の吻合を行うための器械であり、食道空腸吻合、残胃十二指腸吻合、結腸直腸吻合などで用いられることが多いです。
代表的な自動吻合器
CDHやEEAと呼ばれる機種が代表的です。
両者の比較記事はこちらです。
【大差なし】CDHとEEAの違いや使い分けを徹底解説(医療用自動吻合器)
DST Series™ EEA™ サーキュラーステープラー
DST Series™ EEA™ サーキュラーステープラーは、コヴィディエン社製の自動吻合器です。
独自のディレクショナルステープリングテクノロジー、ティルトトップアンビルなどの機能を備えています。
サーキュラーステープラー | コヴィディエンジャパン株式会社 | Medtronic
PROXIMATE®︎ INTRALUMINAL STAPLER ILS
ILSは、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製の自動吻合器です。
ギャップセッティング機構などの機能を搭載しており、“Flexible Anastomosis”が可能となっています。
ILS | 製品情報 | エチコン | ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー
自動縫合器と自動吻合器の比較
自動縫合器(リニアステープラー)の長所
12mmのトロッカーから挿入可能なため、鏡視下手術との相性が非常に良く、様々な場面での使用が可能となっています。
腹腔鏡手術の進歩は自動縫合器の進歩のおかげである部分が多々あります。
(とくに電動式の機種は)片手だけで操作が可能なため、反対側の手で鉗子などを操作して、別のサポート操作ができるのもメリットです。
胃切除において、リニアーステープラーの方が、サーキュラーステープラーより、縫合不全や吻合部狭窄が有意に少なかったという報告もあり、どちらも使用可能な場面では、リニアステープラーの方が優れている可能性があります。
自動吻合器(サーキュラーステープラー)の長所
開腹での食道空腸吻合や、低位前方切除でのDSTなど、術野が深く狭い場所になるほど、その簡便な操作による吻合が絶対的な優位性を持つと言えます。
経口アンビルがより簡便になれば、鏡視下手術での食道空腸吻合などがより簡便になる可能性も秘めています。
まとめ
最後に、この記事の内容のまとめです。
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