胃癌の術前補助化学療法(neoadjvant chemotherapy)〜術前と術後の補助化学療法の比較〜

外科
Medical x-ray illustration of stomach cancer - stomach tumor
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背景

これまでの外科学の歴史の大まかな流れとして、

  1. 手術の誕生と開発
  2. 拡大手術の可能性の模索
  3. 手術の限界の認識と集学的治療の誕生
  4. 術後補助化学療法(adjvant chemotherapy)の開発
  5. 術前補助化学療法(neoadjvant chemotherapy)の開発

ということをまずは押さえておきたい。

このように、ここ数十年の間で、切除可能な癌に対する治療戦略は、手術全盛の時代から、術前あるいは術前・術後化学療法を組み合わせた集学的治療へと大きく変遷してきている。

一般的に、化学療法が良く効く乳癌などの癌種では、早くから術前化学療法が導入されてきた。
胃癌は、標準的化学療法であるS-1+CDDP(CS)療法の奏効率が50%ちょっとでやや物足りない。そのため臨床試験としての位置づけに過ぎなかった。そのため、切除可能境界と考えられる大きなリンパ節腫大を認めるもの(Bulky N+)や、
しかし、2019年9月のESMOでPRODIGY試験の結果が発表され、術前化学療法の開発の機運が再度高まってきたため、まとめてみる。

術後補助化学療法(adjvant chemotherapy)と術前補助化学療法(neoadjuvant chemotherapy)の比較

ここで、術前と術後の補助化学療法のメリットとデメリットを比較していきたい。

術後補助化学療法(adjvant chemotherapy)のメリット

適応の最適化

病理学的病期診断により適応を決定するため、予後不良患者のみに治療を推奨できる

術後補助化学療法(adjvant chemotherapy)のデメリット

コンプライアンス不良

胃癌の術後は、大腸癌の術後と比較して、強力な化学療法が入りにくいのは周知の事実である。
手術侵襲が大きいため、術後に十分に体力が回復せず、規定の化学療法が完遂できない確率が高まる。強度が保てなければ効果が減弱する恐れがある。

効果判定ができない

標的病変などのモニタリングツールがない状態で行うため、効果判定ができない。また有害事象が生じた場合のコンプライアンス低下につながりやすい。

無効な手術が避けられない

手術しても早期に再発するような悪性度の高い癌に対しても手術を行うことになってしまう。

術前補助化学療法(neoadjvant chemotherapy)のメリット

術後より治療コンプライアンス良好

手術による栄養障害や免疫異常がない状態での化学療法になるため、規定の化学療法を完遂できる可能性が高くなる。
適切な強度が保てる事は、良好な治療成績や的確な効果判定につながる。

効果判定ができる

原発巣のある状態で化学療法をするため、効果があるのかないのかが分かりやすい。
化学療法前後の画像検査結果の比較や、手術で摘出した標本から、化学療法の効果が判定できる。

無効な手術が避けられる

術前補助化学療法中に腫瘍が増大してしまうことが中にはある。そういった症例は、手術したとしても効果の乏しい非常に予後不良な群である。
手術前に化学療法をしながら一定の経過観察期間を置くことで、このような予後不良な群を選別することができ、そういった対象に対する手術侵襲を回避することができる。
効果が期待できないような胃切除をせずに済めば、強力な化学療法を中断せずに続けられる可能性が高まり、総合的には生存期間の延長につながることが期待される。

切除可能性が高まるかもしれない

術前に切除ができるかできないかギリギリの状態だった場合、化学療法で腫瘍が縮小すれば、より安全・確実に切除できる可能性が高まることが期待されている。

術前補助化学療法(neoadjvant chemotherapy)のデメリット

過剰または過小治療になる恐れがある

術前に正確な病期診断(ステージング)を行う事は困難である。特にリンパ節転移の有無はCTやPETでも完璧に診断する事は不可能である。
そのような中で対象を決めるので、どうしても適応が不正確にならざるを得ない。

腫瘍が増大して手術できなくなる恐れがある

化学療法の効果がない場合には、根治術である手術を受ける機会を逸してしまうというリスクがある。
医療者の間では、このような症例は、本来予後不良であり、手術効果が乏しいため、「不要な手術を避けられた」という理解がなされる。
しかし、唯一の根治の希望であった手術ができなくなるという事実を受け止める事は、患者自身には非常に辛いということは想像に難くない。

胃癌の術前補助化学療法(neoadjvant chemotherapy)〜欧米における胃癌の周術期化学療法〜

胃癌の術前補助化学療法(neoadjvant chemotherapy)〜日本における胃癌の周術期化学療法〜

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