閉鎖孔ヘルニアの疫学・診断・症状・手術法のまとめ

外科
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疾患の概要

閉鎖孔ヘルニアは比較的まれな骨盤部のヘルニアです。

恥骨と坐骨によって形成される閉鎖孔をヘルニア門とするヘルニアです。

閉鎖孔の解剖

 

閉鎖孔ヘルニア

恥骨と坐骨によって形成されるのが閉鎖孔です。

閉鎖孔ヘルニア

閉鎖孔ヘルニア

外閉鎖筋、内閉鎖筋

↑閉鎖孔を外側から覆う外閉鎖筋(赤)と、内側から覆う内閉鎖筋(青)

閉鎖孔

↑頭側から尾側に見下ろすと内閉鎖筋と恥骨との隙間である閉鎖孔の入り口が分かります。

閉鎖孔ヘルニアの疫学

疫学的な基礎知識としては、通常、高齢(70〜80歳以上)で、痩せた(BMI17前後)、女性(男女比1:9)に多く発生します。

症状は非特異的であるため、しばしば診断が遅れることがあります。

小腸が最も高頻度に嵌頓(カントン。はまること)します。

腸管壁の一部だけが嵌頓するRichter型(リヒター型)ヘルニアも少なくありません。そのため、理論的には腸閉塞の症状が出現しないこともあり、注意が必要です(実際には多くの場合で腸閉塞の症状が出るようです)。

他に、結腸、大網、卵巣、卵管、子宮などが嵌頓することがあります。

診断

理学所見としては、閉鎖神経の圧迫により、閉鎖神経領域の感覚障害が出ることが有名です。これはHowship-Romberg徴候(ハウシップ・ロンベルグ徴候)と呼ばれており、大腿内側の痺れや痛みとして自覚されます。

特に股関節を内転かつ内旋かつ伸展させると感度が上がります。

Howship-Romberg徴候は約半数の症例で見られるとされます。

閉鎖孔ヘルニア

筋肉に覆われるため、閉鎖孔ヘルニアの診断は視診では困難です。

薄筋の裏にヘルニア嚢を触知できるとされますが、経験がないと難しいです。

エコーで閉鎖孔を見ると、脱出した小腸が分かることがあります。それが確認できれば、下記のように直接徒手整復に移行可能です。

閉鎖孔ヘルニアのCT

閉鎖孔ヘルニア CT

診断のゴールドスタンダードはCTです。外閉鎖筋と恥骨筋の間が1cm以上に開大して、そこに軟部組織や脂肪濃度構造が同定できれば、閉鎖孔ヘルニアと診断されます。

恥骨筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋

 

治療

徒手整復

嵌頓している場合、基本的には全例が緊急手術の適応です。

ただ、発症から間もない(長くても6時間以内)場合で、壊死の可能性が少なければ、徒手整復を試みても良いでしょう。うまくいけば緊急手術を回避できることもあります。

閉鎖孔ヘルニア 徒手整復

徒手整復は、股関節を屈曲かつ外転させた状態で行います。こうすることで、薄筋や長内転筋が避けられ、閉鎖孔にアプローチし易くなります。

薄筋のすぐ背側を恥骨結節やや背側・外側に向けて圧迫すると整復できます。

触診で整復を確認しても良いですが、エコープローべを用いて圧迫して、整復される瞬間を目で見て確認するのが効果的です。

可能であれば、さらにCTも実施して整復を確認したいところです。

治療戦略

嵌頓が徒手整復できなければ、緊急手術の適応です。

小腸などが嵌頓していれば、全身麻酔下に開腹して行われることが多いです。

ただ、最近は腹腔鏡を用いて緊急手術を行う施設も増えています。

小腸の壊死があれば小腸部分切除を行います。壊死があれば、感染のリスクから、メッシュは留置しづらいので、子宮や卵巣などを当てて被覆を試みます。

壊死がなければ、一期的にメッシュを当てて根治術を行うこともあります。

徒手整復できた場合は、状況が許せば、待機的に根治術を行います。ただ、高齢でかなり痩身でADL不良の場合が多いため、待機的手術を手配しないこともリアルワールドではあり得ます。

待機的手術の場合は、TAPPなど、両側の観察が可能な腹腔鏡を用いることが多いですが、全身麻酔が必要となることがネックです。

全身麻酔が憚られる場合は、片側しか観察できないというデメリットはあるものの、腰椎麻酔や局所麻酔による鼠径法での修復でも十分QOLの向上には寄与すると思われます。

鼠径法による閉鎖孔ヘルニアの根治術の動画

 

 

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