具体的にTAPPではどれくらいの範囲の腹膜剥離が必要か

TAPP外科

TAPP法は、気腹によって得られる優れた診断能、表層の膜構造を温存することによる術後の疼痛や違和感の軽減などを特長とした術式である。しかし、急速に普及が進んだため、稚拙な手技、不十分な腹膜剥離操作による再発の報告が散見される。

再発させないためには、適切な手術手技を知っておくことが欠かせない。

スポンサーリンク

再発の原因

術後再発に関しては、

  • ヘルニア門となる myopectineal orifice(筋恥骨孔)が十分に被覆できていない=「オーバーラップ不足」
  • メッシュがまくれ返る=「メッシュの展開・固定不良」

が主要な原因とされている。

オーバーラップに関しては、メッシュをmyopectineal orifice(筋恥骨孔)に3cm以上オーバーラップさせて、均一に展開することが重要とされている。

メッシュがまくれ返ることを予防するためには、背側の十分な剥離が最も重要なポイントとされている(剥離不足だと、重力の加減で、メッシュが背側にズレ落ちるため)。

メッシュの固定は、下腹壁動静脈の両脇、腹直筋外縁、メッシュの外側腹側縁、Cooper靭帯への適切なタッキングが重要である。

いずれにしても、十分な腹膜剥離が再発予防のための絶対的な必要条件である。

というわけで、「十分な腹膜剥離」とは一体どれくらいの剥離範囲なのかを知っておく必要がある。

TAPP法で推奨されている腹膜剥離範囲

  • 内側方向は腹直筋外縁から3cm以上内側
  • 腹側方向は内鼠径輪上縁より3cm以上腹側
  • 外側方向は上前腸骨棘のすぐ内側まで
  • 背側に関しては、内側方向では「輸精管と内側臍襞が交差する部分」、外側方向では 「十分に広い範囲まで」もしくは「内鼠径輪下縁から4cm程度まで」などとされている。

メッシュをmyopectineal orifice(筋恥骨孔)に最低3cm以上オーバーラップさせるという原則を意識しておけば細かい数値も覚えやすい。

これらのことから、「最低限」ではなく、「十分な」剥離範囲として、以下の目標を意識する。

内側

内側方向は、下腹部正中の皮膚を押さえ、正中の位置を確認し、腹直筋外縁を超えて正中まで剥離を行う。 内鼠径ヘルニアの場合は、さらに正中を超える範囲まで剥離を行う。

外側

外側は上前腸骨棘内側の皮膚を押さえ、位置を確認し、上前腸骨棘のすぐ内側まで十分に剥離を行う。

腹側

腹側は内鼠径輪腹側縁から3cm 以上を目安に剥離を行う。腹膜と腹膜前筋膜が鈍的に剥離しにくく、鋭的剥離を要することが多いので、腹膜を破らないように注意する。

背側

背側内側ではCooper靭帯より背側2cm以上を目標に剥離を行う。

背側外側では、内鼠径輪背側4 cm程度を目安に剥離を行う。

最後に確認

メッシュ がまくれ返らないように、メッシュを挿入した後に必要に応じて適宜剥離範囲を追加する

参考文献

再発形式からみた当院における腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の問題点と、再発症例に対する至適術式の検討

外科
スポンサーリンク
シェアしてみんなにも教えてあげましょう!
Yasuのフォロー・応援をお待ちしています!
目指せ、トップナイフ!〜消化器外科医のブログ〜

コメントで一緒に記事を盛り上げましょう!

タイトルとURLをコピーしました