他に病因がない時に正常(に見える)虫垂を切除すべきか【ガイドライン】

外科

右下腹部痛を訴える患者に対して腹腔鏡手術を開始したものの、肉眼的には虫垂が正常に見える…。しかし、他に説明可能な原因も見つからない…。

これは実は実際の臨床では時折見られる状況です。PID(骨盤内炎症性疾患)のこともありますが、そうとは言い切れない場合も多いものです。

このような、急性の右下腹部痛を訴える患者に対して、肉眼的に正常な虫垂を切除する必要はあるのでしょうか?

今回はこの辺りの疑問について、エルサレムガイドラインを参考に見ていきたいと思います。

Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines

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結論:定説なし

現在までのところ、根拠に基づいた高レベルの推奨ができないため、正常な虫垂を切除すべきかどうかについては依然として定まった対応はありません。

米国消化器内視鏡外科医会(SAGES)2010のガイドラインでは、他に病因が確認されない場合は、虫垂を切除するかどうかを検討する必要があると述べていますが、結論は個々の症例に応じて判断することとなっています[194]。
欧州内視鏡手術協会(EAES)2016のガイドラインでは、急性虫垂炎が疑われる手術で、虫垂が肉眼的に正常だった場合には、虫垂切除を行うことを推奨しています[195]。

肉眼所見と病理所見には乖離が見られる

手術中の正常な虫垂と急性虫垂炎の術中の肉眼的区別は困難な場合があります。いくつかの研究では、肉眼的に異常がない状況でも、病理学的に異常な虫垂である割合が19〜40%であることが示されています[182、196]。
したがって、異常な可能性のある虫垂を残すリスクと、個々のシナリオでの虫垂切除のリスクを比較検討する必要があります。
虫垂をその場に残すことは、後に急性虫垂炎を発症するリスク、虫垂内の炎症や臨床上問題とならない程度の症状が持続するリスク、虫垂や盲腸の悪性腫瘍を見逃すリスクにつながる可能性があります。

正常に見える虫垂と症状との関連

203例の組織学的に炎症がなかった虫垂切除術を含むGrimesらの後方視的研究によれば、明らかな虫垂炎がない場合、糞便が右腸骨窩の痛みの原因である可能性があります。
この研究では、他の明らかな病因がない場合に、腹腔鏡検査で正常に見える虫垂を切除することが、繰り返す症状の効果的な治療法であると思われました[197]。
同様に、Tartagliaらによると、腹痛のために腹腔鏡下に正常に見える虫垂を切除された患者の90%が症状が改善しました。
虫垂が肉眼的に正常と思われる場合でも、急性右下腹部痛の治療のために腹腔鏡下虫垂切除を行うことは有意義だと思われました。[198]。

痛みが持続する場合の虫垂の病理

Sørensenらは、急性虫垂炎の疑いで腹腔鏡をしたものの、明らかな病因が発見されず、虫垂が切除されなかった患者の後ろ向きコホート研究を行いました。
含まれる271人の患者のうち、56人(20.7%)は、中央値で10か月後に右腸骨窩の痛みで再入院しました。
22人の患者(8.1%)が再度腹腔鏡手術を受け、18人の患者で虫垂が切除され、そのうち1人だけが組織学的に炎症の兆候を示しました。
この研究の結果に基づいて、著者らは、臨床的に急性虫垂炎が疑われても、腹腔鏡下に肉眼で正常に見える虫垂を切除する必要はないと考えました[199]。

陰性虫垂切除に終わった場合の合併症や入院期間

Allaway らは、急性虫垂炎の疑いで腹腔鏡下虫垂切除術を受けた患者の単一施設での後方視的ケースノートレビューの結果を報告しました。
患者は、組織学的診断の結果に基づいて、虫垂炎の陽性群と陰性群に分けられました。
著者らは、包含基準(陽性群で904、陰性群で509)を満たした1413人の患者の間で、全体で陰性虫垂切除(組織学的に炎症がなかった)率を36.0%と報告しました。
合併症率(6.3%vs 6.9%; P = 0.48)と合併症のタイプは、虫垂炎陰性群と陽性群で同じであり、合併症の重症度や入院期間に有意差はありませんでした(2.3対2.6日; P = 0.06)[200]。

出産適齢期の女性の急性下腹部痛の管理のための腹腔鏡検査の使用に関する2014年のコクランレビューでは、腹腔鏡検査により、病因が特定されることが増加していることが示されました。
また、開腹虫垂切除術と比較して、腹腔鏡手術の方が正常虫垂を切除することが多くなりました[201]。

まとめ

外科医による急性虫垂炎の肉眼的判断は不正確であり、ばらつきが大きい。急性虫垂炎の術中所見に基づいた重症度分類のばらつきは、術後抗生物質を処方する決定に影響を与えるため、予防/回避する必要があります。
→手術中に虫垂が「肉眼的に正常」に見えるものの、症状があり、他に明らかな病因が見られない場合は、虫垂を切除することが推奨されます
[QoE:低;推奨の強さ:弱い。 2C]。

参考文献

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Sørensen AK, Bang-Nielsen A, Levic-Souzani K, et al. Readmission and reoperation rates following negative diagnostic laparoscopy for clinically suspected appendicitis: The “normal” appendix should not be removed – a retrospective cohort study. Int J Surg. 2019;64:1–4.

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Gaitán HG, Reveiz L, Farquhar C. Laparoscopy for the management of acute lower abdominal pain in women of childbearing age. In: The Cochrane Collaboration, ed. Cochrane Database of Systematic Reviews. Chichester: Wiley. p. CD007683.

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