『動画付き』結腸脾彎曲部の授動を解説

外科

結腸脾彎曲部は、多数の膜構造や膵などの重要臓器が入り組んでおり、解剖学的に複雑であることや、腹腔内の辺縁にあり、物理的に遠く見えづらい位置にあることなどから、この部分の結腸の授動は比較的難易度の高い手技のひとつです。

今回は結腸脾彎曲部の授動について解説していきたいと思います。

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結腸脾彎曲部の授動におけるピットフォール

まずは膵損傷と脾損傷を起こさないことを心がけて手術操作を進めます。

他に、左尿管や左精巣(卵巣)動静脈の損傷も起こさないように注意します。

結腸脾彎曲部の授動の手順

腹腔鏡手術

内側アプローチ→外側アプローチ→胃結腸間アプローチ(大網前葉切開→膵下縁の切開)の順に行います。

(他にも尾側・内側から横行結腸間膜を授動する方法などもありますが、今回は最もスタンダードな方法の紹介です)

開腹手術

外側アプローチ→内側アプローチ→胃結腸間アプローチ(大網切開→膵下縁)の順に行うことが多いです。

ただ、開腹手術は術野展開を容易に変換できるので、切離線が分かりやすい所から少しずつ様々なアプローチを進めていき、最終的に脾結腸間膜と横隔結腸間膜の切離を行うという戦略を取ることも多いです。

内側アプローチ

下腸間膜動脈(IMA)の処理を終えたら本格的に内側アプローチを始めます。

助手に腸間膜を挙上してもらい、自身で奥の腸間膜を挙上して、後腹膜との癒合部に面で緊張をかけながら切っていきます。

内側アプローチは、外側アプローチより剥離層が1層深くなりやすい(Toldt癒合筋膜の背面の層に入りやすい)ので、後腹膜下筋膜と一緒に挙上されてくる左尿管や左性腺血管の損傷に注意が必要です。毎回必ず尿管と性腺血管を同定してから下腸間膜静脈(IMV)を切る癖をつけてください。

内側アプローチで剥離を頭側へ頭側へと進めていくと、最終的に膵の背側へ入っていきます。膵損傷を来さないように、常に膵との距離感を意識しながら剥離を進めましょう。

ここではあまり無理をせず、頭側は膵下縁辺りをゴールにします。

外側アプローチ

先の内側アプローチによって膜1枚(Monk’s white line)を切離すれば良い状態になっているはずなので手際よく進めましょう。

Off -the-groundと言って、結腸を腹側へ挙上するように牽引することで、内側アプローチで広げた剥離層を視認できるようになり、より安全性が高まります。

Gerota筋膜辺りでは、結腸間膜と腎前筋膜との癒合が強いため、左腎を脱転する層へ迷入しやすくなります。そのため、徐々に結腸に寄っていくように切離線を設定し、Gerota筋膜背側へ迷い込まないようにしましょう。不用意に鈍的剥離を多用すると、剥離層を誤りやすいので、電気メスなどで鋭的切離を心がけましょう。

外側アプローチのゴールは横隔結腸間膜の切離です。もし安全に切離可能であれば、脾結腸間膜まで切離しても良いでしょう。

ここまでの操作によって下行結腸が授動されます。後の操作のゴールの目印(メルクマール)としてガーゼを置いておきます。

(余談ですが、メルクマール=Merkmalはドイツ語で、目印という意味です。英語だとMercur=マーカーですね。)

胃結腸間アプローチ

軽度の逆Trenderlenburg位(頭上げ)にします。

大網切開に先立ってゴールとなる脾下極を確認しておきます。

癒着などで確認できない場合は脾損傷のリスクが高まるため、先に癒着を剥離しておきます。

また、心窩部右寄りに1本ポートを追加しておくことが多いです。

 

大網切開

最初に大網(の前葉)を切開して網嚢を開放していきます。

開始地点としては、身体のちょうど中央辺りが効率的ですが、肥満や癒着によって、網嚢に入りづらい症例では無理をせずに最も疎な所から始めます。

過度な牽引は、脾被膜が裂けてしまう事になるので注意しましょう。

脾下極を目標に切開を進めますが、脾彎曲部に近づくにつれて切離線を結腸寄りに設定するよう意識します。

この展開で、さらに外側の脾結腸間膜までを切離しておきます。

膵下縁の切開

続いて膵下縁に沿って、網嚢を裏打ちする大網後葉を切開します。

大網後葉は、膵の部分で、膵を包むように、膵前筋膜と膵後筋膜となります。

膵に沿って切開するように意識すると、「膵前筋膜」→「膵後筋膜と横行結腸間膜前葉との癒合筋膜」の順に切開することになるかと思います。

これによって、膵が脱転され、横行結腸間膜やGerota筋膜から授動されます。

あとは、内側アプローチおよび外側アプローチから広げてきた後腹膜下筋膜前面の層とつなげるようにして、横行結腸間膜を後腹膜から授動していきます。

以上によって、脾結腸曲が授動されます。

開腹手術はもちろんですが、腹腔鏡手術においても、途中で剥離層がわからなくなった場合に、違うアプローチ法に変えてみることを躊躇しないことが大切です。

まとめ

結腸脾彎曲部の授動は、順番に体系的に進めるのが理想的。

基本的には、腹腔鏡手術であれば内側アプローチ→外側アプローチ→胃結腸間アプローチ(大網前葉切開→膵下縁の切開)の順に行う。

ただ、膜構造が入り組んで複雑なため、迷った場合は、適宜アプローチ法を変更しながら少しずつ授動を進める。

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