腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP、TEP)で最適なメッシュのサイズとは?

TAPP メッシュ サイズ外科

腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術で使用するメッシュにはMやLなど、いくつかのサイズがある。

小さい方が剥離範囲が少なくても済むので敷きやすいが、大きい方がヘルニア門となりえる筋恥骨孔を広いオーバーラップを確保して被覆できる。

どのようなサイズのメッシュを使用するのが良いかは悩みどころである。

今回はInternational Endohernia Societyのガイドラインを参考にしてこの疑問を考えてみる。

このガイドラインでは、1966年から2009年1月までの期間を対象とした体系的な文献検索をPubMedで行っている。

スポンサーリンク

メッシュが小さいことは再発の独立した危険因子

メッシュの大きさは、再発に大きな影響を与える可能性がある。

メッシュが小さいことは、メッシュの種類(軽量or重量など)にかかわらず、メッシュが大きい場合と比較して再発の独立した危険因子であることが示されている。

メッシュのサイズによる直接比較した無作為化試験はなかったが、手術手技に関するいくつかの研究において、異なるサイズのメッシュが使用されていた。開腹と腹腔鏡下ヘルニア修復の最近のメタアナリシスから抽出されたデータでは、メッシュサイズが大きくなるにつれて再発率が減少するという有意な傾向が認められた(「大きい」メッシュとは10×15㎠のサイズであることが多い)。

小さいメッシュと大きいメッシュの再発率の比較

小さなメッシュの使用は再発のリスクをほぼ2倍にしたという報告がある。

他にも、TAPPによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を受けた3,017人の患者を含む大規模なレトロスペクティブシリーズでは、325件の11 × 6 ㎠のメッシュを使用した手術の場合の再発率は5%であり、3,205件の15 × 10 ㎠のメッシュを使用した手術の場合の再発率は0.16%であったと報告されている。

スウェーデンからは2件の大規模な無作為化研究がある。ひとつは、920人の患者を5年間追跡調査し、TAPPとShouldiceを比較したところ、メッシュサイズ7 × 12 ㎠のTAPPを使用した場合の再発率は6.6%であった。もうひとつは、1,370名の患者を対象に5年間追跡した結果、12 × 15 ㎠のメッシュサイズでTEPとLichtensteinを比較したところ、再発率は3-5%であった。

最低3cmのメッシュオーバーラップが必要

動物実験のデータによると、再発の原因となる「ヘルニア門からのメッシュの突出」を防ぐためには、最低3cmのメッシュオーバーラップが必要不可欠であることが示唆されている。

まとめ

腹腔鏡下鼠径ヘルニアの修復に大きなメッシュを使用することは、文献で支持されている。

ただしエビデンスのレベルが低いので、最適なサイズを推奨することまではできていない。

ヘルニア門から、全方向において少なくとも3cmのオーバーラップを確保することは重要であると思われる。

メッシュが腹壁に対して平らになるように、腹膜前腔の剥離は、メッシュの大きさに対して十分に行うべきであることが強調されている。

メッシュのサイズは、メッシュの材質よりもはるかに重要な再発因子である。広く一般的には「(体格が)小さい」患者さんでも10 × 15 ㎠のメッシュが使用されている。患者さんの体格が大きい場合やヘルニア門が大きい場合は、さらに大きなメッシュを使用することが推奨される。より大きなメッシュを必要とする患者に遭遇した場合には、メッシュを2つ使用することも検討する。

外科医によっては、日常的にメッシュを湾曲させて切断し、端を丸めてしまう人もいるが、これは不要である。その代わりに、メッシュを確実に平に敷くために、腹膜前腔を徹底的に広く剥離すべきである。

推奨事項

小さいメッシュは腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術後の再発リスク因子となるかもしれない。

腹膜前腔の不十分な剥離は、大きなメッシュを適切に留置したり、しわやまくれ返りができないようにすることを困難にする。

メッシュのサイズは少なくとも10 × 15cmの大きさが推奨される。

大きなヘルニア(直接鼠径ヘルニアで>3〜4cm、間接鼠径ヘルニアで>4〜5cm)の場合、さらに大きなメッシュ(例えば12 × 17cm以上)を使用する。

TAPP メッシュ サイズ

 

参考文献

Guidelines for laparoscopic (TAPP) and endoscopic (TEP) treatment of inguinal Hernia [International Endohernia Society (IEHS)]Chapter6(2810ページ〜)

 

  1. Neumayer L, Giobbie-Hurder A, Jonasson O, Fitzgibbons R Jr, Dunlop D, Gibbs J, Reda D, Henderson W; Veterans Affairs Cooperative Studies Program 456 Investigators (2004) Open mesh versus laparoscopic mesh repair of inguinal hernia. N Engl J Med 350:1819–1827. (1B)
  2. Neumayer L, Giobbi-Hurder A, Jonasson O (2004) Open mesh versus laparoscopic mesh hernia repair (authors reply). N Engl J Med 351:1463–1465. (4)
  3. Lowham AS, Filipi CJ, Fitzgibbons RJ Jr, Stoppa R, Wantz GE, Felix EL, Crafton WB (1997) Mecha- nisms of hernia recurrence after preperitoneal mesh repair. Ann Surg 225:422–431. (2B)
  4. Stengel D, Bauwens K, Ekkernkamp A (2004) Recurrence risks in randomized trials of laparoscopic versus open inguinal hernia repair: to pool or not to pool (this is not the question). Langenbecks Arch Surg 389:492–498. (2A)
  5. Kapiris SA, Brough WA, Royston CM, O’Boyle C, Sedman PC (2001) Laparoscopic transabdominal preperitoneal (TAPP) hernia repair. A 7-year two- center experience in 3,017 patients. Surg Endosc 15:972–975. (2C)
  6. Arvidsson D, Berndsen FH, Larsson LG, Leijon- marckC-E,Rimba ̈ckG,RudbergC,SmedbergS, Spangen L, Montgomery A (2005) Randomized clinical trial comparing 5-year recurrence rate after laparoscopic versus Shouldice repair of primary inguinal hernia. Br J Surg 92:1085–1091. (IB)
  7. Eklund AS, Montgomery A, Rasmussen C, Sandbue RP, Bergkvist LA, Rudberg CR (2009) Low recurrence rate after laparoscopic (TEP) and open (Lichtenstein) inguinal hernia repair. A randomized, multicenter trial

with 5-year follow-up. Ann Surg 249:33–38. (IB)

  1. Knook MT, van Rosmalen AC, Yoder BE, Kleinren- sink GJ, Snijders CJ, Looman CW, van Steensel CJ (2001) Optimal mesh size for endoscopic inguinal hernia repair, a study in a porcine model. Surg

Endosc 15:1471–1477. (5)

  1. Totte E, Van Hee R, Kox E, Hendrickx L, Van

Zwieten KJ (2005) Surgical anatomy of the inguinal region: implications during inguinal laparoscopic herniorrhaphy. Eur Surg Res 37:185–190. (5)

  1. Lowham AS, Filipi CJ, Fitzgibbons RJ Jr, Stoppa R, Wantz GE, Felix EL, Crafton WB (1997) Mecha- nisms of hernia recurrence after preperitoneal mesh repair. Traditional and laparoscopic. Ann Surg. 225:422–431 (4, videotapes from 13 recurrence operations analysed by experts). (4)
  2. Phillips EH, Rosenthal R, Fallas M, Carroll B, Arregui M, Corbitt J, Fitzgibbons R, Seid A, Schultz L, Toy F et al. (1995) Reasons for early recurrence following laparo- scopic hernioplasty. Surg Endosc 9:140–144. (2C)
外科
スポンサーリンク
シェアしてみんなにも教えてあげましょう!
Yasuのフォロー・応援をお待ちしています!
目指せ、トップナイフ!〜消化器外科医のブログ〜

コメントで一緒に記事を盛り上げましょう!

タイトルとURLをコピーしました